〈2023年〉日本の木材自給率最新データと推移|国産材利用の現状・メリット
日本は国土の大半が森林である木材に恵まれた国です。
ところが、建築業界をはじめとして、まだまだ輸入材に依存していると言われています。
そこで今回は、木材自給率の最新情報とこれまでの経緯や、国産材を取り巻く環境、使用するメリットを紹介します。
木の魅力を生かし、なおかつ、環境に配慮した設計デザインを実現させたい方は、ぜひ参考にしてください。
● 日本の木材自給率は上昇傾向にあるものの、諸外国と比べるとまだまだ低い水準です。
● 日本の木材自給率を上げると、経済面・環境面においてメリットを得られます。
● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、県産材・地域材を利用した高品質な木質建材を製造しております。
コンテンツ
日本の木材自給率はどのくらい?今までの推移
「木材自給率」とは、全産業において、国産の木材をどれほど活用しているかを表す指標です。
木材自給率(%)= (国内生産量 / 木材の国内消費量)× 100
林野庁の発表によると、2022年の木材自給率は「40.7%」で、建築用材に限定すると「49.5%(前年比+1.5%)」にまで上ります。(参考:林野庁|「令和4年木材需給表」の公表について)
つまり、2022年に流通した建築用材のおよそ半分が国産材、残り半分が海外からの輸入材ということです。
木材自給率は、2002年に過去最低の18.8%まで低下したものの、それ以降は政府の取り組みが功を奏して、回復に転じています。
林野庁公表の最新情報によると、2023年9月の木材輸入実績は「前月比−3%」、前年同月比−21%」と大幅に減っています。(参考:林野庁|2023 年9月木材輸入実績(速報値) (10 月27 日公表))
つまり、木材自給率の上昇が期待できるということです。
政府は、法整備や補助金実施を通して、木材利用促進、木材自給率アップ、ひいては国産材利用の活用を推し進めており、様々な業界が参加している「木づかい(ウッドチェンジ)運動」もその一環です。
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「日本は木材自給率が低い」というのは本当?世界との比較
日本は国土の2/3ほどを森林が占め、そのうち約50%が天然林、約40%が杉・桧など建築用材に適した樹木が育つ人工林です。
ところが、日本の木材自給率は諸外国よりも「低い」と言われることがあります。
では、森林率が高い国や先進国、木材自給率の高い国の数値と比較してみましょう。
(国名) | (木材自給率) |
フィンランド | 126% |
スウェーデン | 139% |
日本 | 40.7% |
韓国 | 17% |
オーストラリア | 94% |
アメリカ | 86% |
中国 | 69% |
ロシア | 189% |
カナダ | 303% |
マレーシア | 341% |
お隣韓国よりも木材自給率は高いものの、そのほかの諸外国と比べると、確かに木材自給率は低めです。
つまり、貴重な森林資源を国内で活かしきれていないのが現状と言えるでしょう。
建築業界が国産材を使わない理由はいくつか考えられますが、住宅メーカーへのアンケート調査によると、「外国産材よりも価格が高い」、「必要な時に必要な量が確保できない」などの回答が挙がっています。
ところが、2021年からコロナ禍をきっかけに世界中に広まった「ウッドショック」によって、木材不足や価格高騰が起こり、輸入材の入手が困難になりました。
それによって、住宅業界では、輸入材から国産材への代替えが進んだのです。
また、国産材から作られるCLT(直交集成板)が普及し始めたため、今後は木造率の低い非住宅や中高層建築物においても、国産材利用が進むことが期待されています。
柏田木材は、銘木で知られる奈良県産木材をはじめとした高品質な国産材から、様々な木質建材を製造しています。
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木材自給率が上がるとどうなる?国産材を利用するメリット
政府が様々な施策によって木材自給率を上げようとしているのには、明確な目的があります。
木材自給率が上がると、以下の問題解決が期待できるからです。
価格高騰・納期遅延の影響回避
世界の情勢によって大きく価格や流通量が影響を受ける輸入材と比べると、国産材は林野庁の管理下の元で価格がある程度コントロールされるため、比較的価格変動が少なく、安定して材料が供給されます。
また、輸送距離が短いため、原油高騰などの影響も輸入材と比べると少ないことは明白です。
実際に、先でもお話ししたように、2021年のウッドショック後には、建築業界で輸入材から国産材への移行が進みました。
輸送エネルギー削減
輸入材は、当然のことながら海を渡る長距離の輸送が必要です。
つまり、その過程で大量のエネルギーを使ってしまいます。
一方、国産材は輸送が国内に限られます。
そのため、大幅に輸送エネルギー、ひいては二酸化炭素排出量を削減でき、環境問題解決に寄与できる点も大きなメリットです。
ヨーロッパ産輸入材と国産材の輸送過程における二酸化炭素排出量を比べると、およそ1/9まで抑えられます。
地滑り防止などの自然災害抑制・水源涵養作用
森の木々を伐採すると自然破壊になると考える方もいますが、実際はそうではありません。
植林・伐採・利用のサイクルを繰り返すことで、森林は活性化して健やかな状態になるからです。
森林が活性化すると、木々が根を広げて山間部の地滑りを防止し、さらに、土壌にたくさんの水分を抱え込んで、それをじっくりと浄化する水源涵養機能が得られます。
そのため、国産材利用は日本の森林資源だけではなく、山間部に住む人の生活や豊かで上質な水資源まで守ることにつながるのです。
山村地域と都心部の経済格差解消
国産材の使用量が増えて木材自給率が上昇すると、林業や製材業が主な収入源である地域の経済が活性化します。
そのため、昨今問題視されている地方と都心部の収入格差が縮まることが期待されているのです。
労働生産性の水準は、その地域が高い生産性をもった産業に特化しているのか、生産性の低い産業に特化しているのかによって大きく左右される。
(中略)
地域の生産性は、より生産性の高い産業に特化している度合いが大きいほど、人的資本が高いほど、それに比例して高いということがいえる。
(引用:内閣府|地域間の経済格差とその要因)
森林資源が“お金”を生み出せば、山村地域の経済が豊かになり、過疎化に歯止めがかかることも想定されています。
林業の人材不足解決
昨今、林業は従事者の高齢化が進んでおり、高齢率(65歳以上の従事者割合)は、1980年時点で8%だったのに対して、2015年には25%まで上昇しました。
この動きは、木材自給率のグラフと反比例しており、林業の規模が縮小するほど高齢化が進んでいます。(参考:林野庁|林業労働力の動向)
逆に言えば、木材自給率が上がり、国産材が多く流通すれば、林業が再び潤って従事者が増えるということです。
実際に、ここ数年木材自給率が上昇していることもあり、林業従事者の平均年齢は2000年の56.0歳から、2015年の52.4歳と、少々ではありますが若返り始めました。
これは、政府が「国産木材が使われないから若者が林業・製材業に従事しない」「従事者が少ないから安定した供給量を維持できない」という“負のスパイラル”を断ち切るべく、2003年から実施している「緑の雇用」事業の効果が現れ始めた証と言えるでしょう。
森林資源が充実し、間伐や主伐・再造林等の事業量の増大が見込まれる中、若者を中心とする新規就業者の確保及び育成が喫緊の課題となっている。
このため林野庁では、平成15(2003)年度から、林業への就業に意欲を有する若者を対象に、林業に必要な基本的技術の習得を支援する「「緑の雇用」事業」を実施している。
同事業では、林業事業体に新規採用された者を対象として、各事業体による実地研修や研修実施機関による集合研修の実施を支援している。
平成28(2016)年度までに、同事業を活用して新たに林業に就業した者は約1万7千人となっている。
(引用:林野庁|林業労働力の動向)
柏田木材は1950年に奈良県五條市にて「柏田木工所」として創業して以来、国産材・地産材の活用へ積極的に取り組んでいます。
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国産材にデメリットや注意点はある?
木材自給率上昇は様々なメリットをもたらしますが、一方で国産材を使う場合に知っておかなくてはいけない注意点があります。
- 多湿な季節には適度な木材乾燥が難しく、高い加工技術が必要になる
- 輸入材との価格差は縮まっているものの、まだ値段は高い
- 輸入材よりも流通量が少なく、樹種が限られている
- 品質評価が不明瞭
木材が適切な含水率になるまで乾燥させないと、反りや伸縮などの変形リスクが伴います。
そのため、木の特性を知り尽くした上での高い加工技術が必要です。
そして、輸入材との価格差は小さくなっているといっても、同等の値段までには至っていません。
しかし、近年では輸入材の急な価格高騰のリスクを回避する目的で、国産材へ移行するケースが増えています。
流通量や樹種のレパートリーについては、今後林業が再び活気を取り戻せば、解決されるかもしれません。(参考:林野庁|森林の適正な整備・保全の推進)
最も懸念されている品質評価については、JAS規格の見直しが進んでおり、今後は科学的根拠に基づいた安全性の証明が進むことが期待されています。(参考:林野庁|国産材製品の活用、林野庁|国産材製品の生産及び利用等)
このように、国産材のデメリットは技術革新などによって確実に解消されつつあります。
国産材を建築デザインに取り入れたい方は、“仕上げ材の木質化”から始めるのがおすすめです。
内装制限や外装制限の対象となる建築物でもご採用いただける不燃木材もございますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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国産材利用で補助金利用の可能性も
国産材の活用促進は、国の重要な施策であるため、いくつもの補助事業が行われています。
都道府県・市区町村単位で、独自の補助金がありますので、国産材・県産材・地域材を使う際は、支給対象となる事業がないか自治体へお問い合わせください。
柏田木材のある奈良県では、建築場所を県の内外問わず対象となる補助事業を行なっています。
奈良県産の木材を利用したい方は、「奈良の木を使用した住宅助成事業」「公共施設における県産材利用に係る支援」をぜひご活用ください。
良質な国産材を使った内外装木材は“柏田木材”へご相談を
私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。
1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。
自社製品の製造販売だけではなく、木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。
● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
● ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。
● お客様からの材料支給にも対応いたします。
● 加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて行います。
● お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。
“県産材・地域材”の活用
柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。
以下のような地域材の活用実績がございますので、ぜひご相談ください。
- 奈良県産杉
- 奈良県産桧
- 吉野杉
- 吉野桧
- 信州産唐松
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立地による“リーズナブルな価格”の実現
私たちが工場を構えるのは、奈良県五條市。
銘木として知られる吉野杉の産地とも近い、林業・製造業が盛んな地域です。
そのため、良質な木材を最低限の輸送コストで入手できるため、お客様にもコスパの高い木質内装建材をご提供できます。
倉庫管理による“施工効率性アップ”
羽目板材などは長尺な建材であるため、現場での置き場確保にお困りのケースは少なくありません。
早めに納品すれば、作業スペースに影響がでてしまうこともあるでしょう。
柏田木材では、材料の一時保管場所として、自動倉庫による管理を導入しています。
必要なものを必要なタイミングで現場へ納品できるため、施工効率性アップが期待できるだけではなく、工期遅延のリスクを防げます。
全工程を自社工場で行う“品質安定性”
木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行っているため、品質のばらつきや手作業による人工の増加、工程間での運搬による時間や費用のロスを最小限に抑えられます。
全工程を自社で管理しているため、高い品質安定性を保証できる点が私たちの誇りです。
工期・予算・デザインに合わせた“材料選定のご提案”
柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。
そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで一貫したサポートをご提供。
「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。
まとめ
国産材利用が進めば、木材自給率は上がります。
木材自給率が上がると、経済面や環境面において大きなメリットをもたらすことが期待できるため、政府の重要な取り組みのうちの一つとされています。
ただし、国産材利用をさらに普及させるためには、解決しなくてはいけないデメリットがある点は否めません。
ですから、まずは構造的な耐久性を必要としない仕上げ材に国産材を使ってみませんか?
“柏田木材”は、良質な国産材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材をご提案しています。
塗装も全て自社で行なっていますので、多彩な塗装ラインナップより、ご要望に合うものをご提供できる点が強みです。
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。