国産材利用でSDGs達成を目指す。メリット・デメリットから活用方法まで徹底解説

建物の設計デザインをする際に、みなさんはどのようなポイントを見て材料を選びますか?

品質がいいことはもちろんですが、最近は環境的な側面から材料を選ぶケースも増えています。

そこで近年注目されているのが「国産材」。

政府も積極的な活用を推奨しています。

しかし、具体的なメリットや注意点をご存知ない方も多いでしょう。

今回は、国産材利用のメリット・デメリットについて、木材のプロが詳しく解説します。

コラムのポイント
●「国産材の利用」には、環境面・経済面・社会面など多方面でのメリットがあります。
●国産材利用が進まない理由として、いくつかのデメリットや注意点が挙げられます。
●私たち「柏田木材工業」は、1950年に創業以来培った高い製造技術を活かし、環境に配慮した高品質の内装材製造や、開発サポートを行っています。




第三次ウッドショックによって拍車がかかった“国産材利用”

国産材利用とウッドショックの関係



まだ記憶に新しい2021年から始まった「ウッドショック」。

今までも、世界情勢によって第一次・第二次とウッドショックは起こってきましたが、2021年初めに発生した第三次ウッドショックが建築業界へもたらした影響は絶大です。

最高で相場の1.5倍程度まで建築用木材の価格が高騰し、住宅業界へ大きな打撃を与えました。

「需要」の変化

新型コロナウイルス感染拡大によってアメリカ・中国を中心に住宅需要が拡大し、木材の買い占めが進む。

「供給」の変化

コロナ禍による製材工場の稼働率低下によって供給量が減少し、さらにアメリカなどで多数の森林火災が発生。

2022年に起きたロシアウクライナ情勢による、ロシア産木材の輸出減少も一因。

「物流」の変化

コロナ禍による港などのロックダウンや、運輸業の人材不足、コンテナ不足、関税検査の遅延などが相まり、国際物流が滞る。

突如入手困難になった「輸入材」に変わり、比較的安定して供給される「国産材」に建築業界からの注目が集まりました。





国産材を使うメリットは?

国産材のメリット



ウッドショックによる輸入材高騰が国産材利用推奨の理由と思っている方も多いかもしれませんが、実は様々な点においてメリットがあります。

では、それぞれ詳しく見てみましょう。


その①「脱炭素化・カーボンニュートラルへの貢献」

こちらは、輸入材(外材)・国産材(内材)問わず、「木材利用」に関するメリットです。

木材は、他の建築材料と比べても製造・加工過程において消費エネルギーの少ない“エコマテリアル”として知られています。

◆エコマテリアル
エコロジーを念頭においた材料、すなわち、作り出すとき、使っているとき、また、使い終わったときも、資源の保護・再利用、地球環境保全、省エネルギーなどを考慮した材料のこと。

(引用元:環境庁|木材の活用による環境保全について


その中でも、国産材は総運搬距離が短いため、さらに消費エネルギー量が少なく、ウッドマイレージ(木材輸入量×輸送距離)の大幅な削減につながります。

ウッドマイレージを削減できるということは、運搬時に発生する二酸化炭素量も減らせることを意味します。

国産材の二酸化炭素排出量
(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム




その②「地方経済の活性化」

日本は、国土面積の2/3ほどを森林が占める世界有数の森林大国です。

広大な森林のうち、人工林、つまり木材用の森林は約40%で、林業は古くは日本経済を支える一大産業でした。

しかし、近年は従事者不足や高齢化が深刻で、潤沢な森林資源を活かせずに、建築業界も安価な輸入材(外材)に頼ってきたのが現実です。

つまり、逆に言えば、国産材利用率が高まれば、林業や製材業が盛んになり、人材が増えるということ。

林業や製材業の活性化は、山村地域に産業と雇用を生み出し、地方経済が発展する可能性が高まります。

2019年4月には「森林経営管理制度」が制定され、森林所有者が高齢化して個人では管理しきれていない山林を、市町村主導で整備できる仕組みが確立しました。

これによって、今まで放置されていた森の活用が進むことが期待されています。

(引用:林野庁|森林経営管理制度(森林経営管理法)について



その③「森林保全・活性化への貢献」

森林の木々を伐採することで自然破壊につながると思う方も少なくありませんが、実は森を健全な状態で維持するためには、植林→伐採→利用→植林…と、森を循環させなくてはいけません。

木々を計画的に間伐・伐採することで、木の“若返り”が進み、成長が促進されるのです。

(引用:林野庁|木材の利用の促進について )



しかし、日本の森林は「木の高齢化」が進んでいます。

下のグラフは、人工林における木の樹齢分布を示していますが、2016(平成28)年の時点で、収穫適齢期である10齢級を超える木が半数を超えています。

(引用:林野庁|我が国の森林管理をめぐる課題



つまり、伐採すべき時期を迎えていても、そのままになってしまっているということです。

この状況が続けば、日本の貴重な資源である森林が衰退してしまうかもしれません。



その④「国産材の安定供給・コスト低減」

今まで、どうしても輸入材の方が安価である事実があり、そこから大手ハウスメーカーなどが、国産材を建材選定の選択肢から除外してきたことは否めません。

しかし、ウッドショックをきっかけに、国産材と輸入材の価格差は縮まり、むしろ、供給量や価格に関して社会情勢の影響を受けにくい国産材への注目が高まっています。

しかし、輸入材から国産材へ一斉に切り替えようとしても、伐採や製材がそれに追いつかないという現実も。

そのため、当面は輸入材と国産材の併用が理想的で、徐々に木材自給率を高めていくことで、林業・製材業が再成長し、安定供給やコスト低減が期待できます。

政府も、林業・製材業の施業集約化や路網整備等を進めており、増えつつある需要のニーズに十分対応できる国産材供給を課題としています。(参考:林野庁|国産材の安定供給体制の構築に向けて



その⑤「SDGs実現への寄与」

輸入材と比較して少ない運搬時の消費エネルギーなど「環境面」でのメリットに加え、地方経済の発展など「経済面」でのメリットもある“国産材利用”。

多方面から、人々のサスティナビリティ(持続可能性)を高められます。

森林とSDGs
(引用:林野庁|我が国の森林の循環利用とSDGsとの関係





その⑥「顧客満足度の向上」

政府の調査によると、木材を利用した建築において、国産材を利用することへのニーズが高まっています。

世論調査によると、国民の8割以上が住宅を建てたり、買ったりする場合、木造住宅を選ぶと回答しており、国民の木造住宅に対するニーズは根強いものがある。

また、「木造住宅を選びたい」と回答した者の約7割が健康に配慮した材料の使用、品質や耐久性などを重視しており、約1/3の者は国産材の使用を重視している。

(引用:衆議院調査局国土交通調査室|建築・住宅における木材利用の現状と方向性


つまり、「国産材利用」を設計デザインの主軸にすることは、多くの顧客獲得につながる可能性があるということです。



その⑦「企業イメージ向上・CSR実現」

国産材利用を通して、SDGsに関する活動をPRすることができます。

社会貢献・環境保全にもつながるため、企業やプロジェクトの社会的イメージの向上が期待できるでしょう。

実際に、国産材利用をCSRのテーマにしている会社もあります。(参考:タマホーム|国産材活用による森林環境への貢献三菱地所グループ|国産材活用による持続可能な木材の利用推進

林野庁が令和元(2019)年に国内企業を対象に行ったアンケート調査では、回答した企業の6割以上が森林・林業・木材利用に関わる活動を行っていた。

こうした企業のうち51.8%が、平成18(2017)年以降にこれらの活動を開始していることから、近年、取組を始める企業が増えていることが推察される。

(引用:林野庁|森林から生まれるビジネス


森林利用と企業の取り組み
(引用元:林野庁|森林から生まれるビジネス






国産材利用のデメリットはある?あまり使われていないって本当?

国産材のデメリットや注意点



林野庁の発表によると、日本の木材自給率は2021(令和3)年で41.1%(前年比較-0.7%)で、そのうち建築用材等の自給率は48.0%です。

順調に増加してはいるものの、未だ過半数には至っていません。

多くの面でメリットがあるにも関わらず、飛躍的に国産材利用率が上がらない理由は、いくつかのデメリットや注意点があるからです。


その①「木材の天然乾燥が困難」

木材は、伐採された直後には含水率100〜200%と、たくさんの水で満たされています。

そのままでは建築材料として使えないため、強度が高まる含水率30%前後まで乾燥させる必要があるのです。

しかし、多湿な気候である日本では、天然乾燥が難しいため、どうしても機械乾燥に頼らざるを得ません。

そのため、どうしてもコストが上がり、資材の多くが輸入材に依存してしまっているのです。



その②「高い加工技術が必要」

国内の森林は丘陵地が多いため、日当たりの影響などで曲がった樹木の割合が多いとされています。

そのため、真っ直ぐに伸びた樹木と比べるとどうしても高い加工技術や手間が必要となってしまうのです。

ただし、林野庁を筆頭に、まっすぐ短期間で育つ“エリートツリー”の開発が進んでいるため、今後の製材効率の向上は期待できるでしょう。(参考:林野庁|エリートツリーの開発・普及



その③「高価格というイメージの恒常化・流通量の少なさ」

林野庁の行ったアンケートによると、大手ハウスメーカーやデベロッパーが国産材を使わない理由として「外国産材に比べて価格が高い」、「必要な時に必要な量が確保できない」という点を挙げています。(参考:林野庁|国産材製品の活用

確かに現状では高品質の無垢材を大量入手しづらい点は否定できませんし、まだまだ輸入材よりもコストは高めです。

しかし、木材自給率がさらに上昇して林業・製材業が発展すれば、流通量と価格の懸念点が一気に解決できるかもしれません。

実際に、2021年のウッドショック時には、当てにしていた輸入材の納品が滞り、価格高騰によって国産材とのコスト差が縮まるいう現象が起こりました。



その④「樹種が限定的」

日本の人工林で育つ主要樹種の面積構成比は、スギが44%、ヒノキが25%と、大半が針葉樹です。

我が国の森林面積のうち約4割に相当する1,020万haは人工林で、終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林されたものが多くを占めており、その半数が一般的な主伐期である50年生を超え、本格的な利用期を迎えている。

人工林の主要樹種の面積構成比は、スギが44%、ヒノキが25%、カラマツが10%、マツ類(アカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ)が8%、トドマツが8%、広葉樹が3%となっている。

(引用:林野庁|森林の適正な整備・保全の推進


つまり、内装材など意匠的に使用する場合、国産材に限定するとどうしても樹種の選択肢が狭まってしまうということです。

ただし、近年はナラ・タモ・セン・ケヤキ・メジロカバ・ニレ・クリなどの広葉樹も徐々に増えてきています。




建築に国産材を積極的に使う方法は?



最近は、大規模建築の木造化などがニュースで取り上げられることも増えてきましたが、やはりまだまだ法的なハードルや予算面での懸念点が多く、ビックプロジェクトでないと実現が困難な点は否めません。

ただし、建築物の規模を問わず国産材を活用できる方法があります。

それが、「内装の木質化」です。

不燃木材も技術も進歩しているため、公共施設など内装制限を受ける建築物においても、ウッドインテリアを採用する事例が増えています。(参考:林野庁|内装木質化した建物事例とその効果

また、住宅においては長年木を取り入れたインテリアの人気は高く、国産材利用をメインコンセプトに掲げた工務店やハウスメーカーは少なくありません。

「設計デザインに国産材を取り入れたいが、木造化は難しい」そのような場合には、ぜひインテリアへの国産材利用をご検討ください。




確かな品質と環境への配慮の両方を実現した“柏田木材工業”の内装材

一号棟内観



私たち「柏田木材工業株式会社」は、1950年に奈良県で木工所として創業して以来、多くの木製品の開発・製造支援を行ってきました。

木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。

国産材利用にも積極的に取り組んでおり、以下のような地産材を用いた実績がございます。


  • 奈良県産杉
  • 奈良県産桧
  • 信州産唐松
  • 吉野杉
  • 吉野桧



「国産材・地産材でこんな製品が作りたい」というご要望も“柏田木材”でしたら、実現できます。

私たち「柏田木材工業株式会社」は、1950年に奈良県で木工所として創業して以来、多くの木製品の開発・製造支援を行ってきました。

木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。

その理由は、柏田木材工業がお客様へご提案する5つの“お約束”があるからです。

柏田木材・5つのお約束
●加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
●ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。
●お客様からの材料支給にも対応いたします。
●加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて対応いたします。
●お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。



木材に関するすべての工程を自社にて対応し、倉庫管理の代行によって運送距離や回数を減らすことで、運搬エネルギーの削減を実現できます。

また、自社工場は銘木として知られている「吉野杉・吉野桧」の産地と近いため、高品質な木材から作られた製品を最小限の運搬エネルギーでご提供できる点も強みです。

「バイオマスボイラー」による自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なUV塗装・オスモUV塗装の導入によるVOC削減など、様々なアプローチで環境に配慮。

総合的に地球環境保護に取り組んでいます。

「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」

「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」

「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」

「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」



そんなお悩みを抱えている企業様を、1950年創業以来“木工所”として培ってきたノウハウと環境開発でしっかりサポート。

木材利用の可能性を広げることで、環境保全へ貢献しています。

「ウッドチェンジを伴った製品開発支援」や「物流コストの削減貢献」、「希少樹種の代替品提案」、「高耐久な木部塗装」など、様々な木材に関するお悩み解決をサポートさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。



柏田木材工業へのお問い合わせがこちらから




まとめ

国産材利用は、環境面・経済面などのメリットがあるほか、企業やプロジェクトのイメージを向上させるなどの利点があります。

ただし、使用する木材の全てを一気に国産材へ切り替えることは、現時点ではあまり現実的ではありません。

建物規模問わず採用しやすいのが、「内装の木質化」です。

納まりや法的制限に合わせて材料を加工すれば、国産材率を高めた建築物が実現できます。

「国産材を使ってこんな部材が作りたい」「地域を限定した材料を取り入れたい」という方は、まず柏田木材工業へご相談ください。

高い加工技術で、あなたの理想を叶えます。

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