【木造の耐火建築物】基準・関連告示を紹介|外壁の材料選びについても

【木造の耐火建築物】基準・関連告示を紹介|外壁の材料選びについても


これまで「耐火建築物」と言えば、鉄筋コンクリート造や鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造などが主流でしたが、近年の“木材利用促進”の流れを受け、木造の耐火建築物が増えています。

しかし、いざ建てようとしても、基準はいまいち分かりにくいですよね。

そこで、今回は「木造の耐火建築物」について、基準の概要や燃えしろ設計について詳しく解説します。

木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

コラムのポイント

● 耐火建築物を木造にする場合は、主要構造部の仕様について注意が必要です。

● 耐火建築物の外装に木材を採用する場合は、燃えしろ設計や不燃木材を取り入れる方法もあります。

● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、国産材・県産材・地域材を用いて、様々な建物へ採用できる外装木材を提案しております。



耐火建築物・準耐火建築物とは?

法第22条区域とは?“延焼のおそれ”がある範囲や条件に関する法令・告示


防火・耐火性能のある木造建築は、「耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物(一般木造建築物)」に分けられ、建物規模や用途によって、都市計画法で定められた防火地域・準防火地域・法22条区域内では、「耐火建築物もしくは準耐火建築物」の基準を満たしていなければいけません。
(参考:建築基準法27条



〈耐火建築物〉

主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)を耐火構造とし、その建築物に隣接する建築物を含め、火災による加熱を受けている間だけではなく火災終了後も、崩壊せず自立し続けられる耐力を持っている建築物を指します。(参考:建築基準法第2条第1項第9号の2


〈準耐火建築物〉

主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)を準耐火構造とし、その建築物に隣接する建築物を含め、火災による加熱を受けている間、崩壊せず自立し続けられる耐力を持っている建築物を指します。(参考:建築基準法第2条第7号の2



どちらも、火災時に施設利用者が避難するための時間を確保し、建物倒壊による二次災害や近隣への延焼を防ぐ目的があります。

主要構造部を木造にする場合は、その部分を耐火被覆で連続的に覆う必要があります。

そのため、構造部が太く・厚くなるため、戸建住宅よりもマンションや商業施設・公共施設など、中規模以上の建物へ採用されるケースが大半です。

最近は、木造の柱・梁の厚さを厚くして構造耐力を一定時間維持する「燃えしろ設計(木材表面から一定厚さ燃えても構造耐力を維持できるようにする設計手法)」を用いて、木部を“あらわし”にするデザインも採用されています。

ポイント

耐火建築物も準耐火建築物も、火災時に倒壊しない性能基準をクリアした建築物ですが、火災による倒壊を防ぐことのできる時間の長さが異なります。

耐火建築物:火災中だけではなく火災終了後も、最大3時間倒壊を防げる
準耐火建築物:火災中に、最大1時間倒壊を防げる


建物の敷地が、防火地域・準防火地域・法22条区域のどれに該当するかによって、耐火建築物・準耐火建築物にするか、部分的に準耐火構造にすればいいのかなどの基準が異なります。

地域制限の内容
防火地域・原則的に全ての建築物を「耐火建築物」にしなくてはいけない。
・木造建築は基本的に建てられない。
・開口部は「防火戸」にしなくてはいけない。
準防火地域・階数や延べ床面積によって「耐火建築物・準耐火建築物」にしなくてはいけない。
・木造の2階建て以下の建築物は、「防火構造」にしなくてはいけない。
・開口部は「防火戸」にしなくてはいけない。
法22条区域・木造は可能だが、屋根を「不燃材」にしなくてはいけない。
・外壁・軒裏の“延焼のおそれがある部分”は「準防火構造」にしなくてはいけない。




木造耐火建築物に関する基準

法第22条区域・防火地域・準防火地域|構造の違い



これまで、耐火建築物・準耐火建築物を木造にするハードルは高く、あまり実現されてきませんでした。

しかし、2019年6月に施行された「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」によって、木造建築物にかかわる制限の合理化が実現しました。

ポイント

建築基準法の改正によって、耐火構造とすべき木造建築物の対象が縮小され、木造耐火建築物の実現性が高まりました。

【改正前】耐火構造とすべき木造建築物は「高さ13m超もしくは軒高9m超」
【改正後】耐火構造とすべき木造建築物は「高さ16m超もしくは4階建て以上」

さらに、改正後に規制の対象となる建築物においても、木材をそのまま“あらわし”にすることが可能となる基準へ見直されました。


この改正は、木造建築の可能性を拡げ、木造化促進を目指す目的があります。

その後、2022年にも法整備が行われ、改正基準法にてさらに防耐火規制が整備されたことで、木造耐火建築物の実現可能性が高まったのです。

規制が合理化したことで、木造建築物における全ての主要構造部について、1時間耐火構造の部材が認証され、今では、下層階を 2 時間耐火構造の鉄筋コンクリート造や鉄骨造にすれば、5 階建て以上の建築物でも木造で建てられるようになりました。

耐火建築物に関する告示

木造耐火建築物に関する関連告示では、外壁・間仕切壁、その他主要構造部の仕様や、施工方法を定める規定が明記されています。

  • 耐火構造の構造方法を定める件の一部を改正する告示(平成26年国交省告示第861号)
  • 防火地域又は準防火地域内の建築物の部分及び防火設備の構造方法を定める件の一部を改正する件(令和2年国土交通省告示第199号)
  • 主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準を定める件(令和2年国土交通省告示第249号)
  • 準耐火構造の構造方法を定める件の一部を改正する件(令和3年国土交通省告示第514号)
  • 防火構造の構造方法を定める件の一部を改正する件(令和3年国土交通省告示第513号)
  • 不燃材料を定める件の一部を改正する件(令和4年国土交通省告示第599号)
  • 安全上、防火上及び衛生上支障がない軒等を定める等の件(令和5年国土交通省告示第143号)

(参考:国土交通省|建築基準法等に基づく告示の制定・改正について


これらの告示では、耐火建築物を木造で建てる場合に、主要構造部を石膏ボードなどで被膜して燃え止り層を設ける内容や、耐火性能検証法に基づき天井高や空間広さを工夫して火災時の熱がこもりにくくすることで、木材を“あらわし”にできる内容が盛り込まれています。

ポイント

告示内容は頻繁に改正されるため、常に最新の情報をチェックしましょう。

特に、耐火建築物・準耐火建築物に関する告示発表は多いため、国土交通省の通達をこまめに確認してください。


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耐火建築物における“燃えしろ設計"

法22条区域内外にまたがる場合はどうなる?区域の調べ方


木材は外部から燃えると、表面が炭化し、その部分はそれ以上燃焼しなくなります。

この特性を利用するのが、「燃えしろ設計」という手法です。

主要構造部へ太く(分厚い)木材を採用すると、火災で燃えた際も、燃え残った部分が構造計算で必要な構造材断面積より大きいとなり、耐力を維持できるという仕組みです。

燃えしろ設計の原理
(引用:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会


燃えしろ設計は、1987年に制定された「昭和62年建告第1901号及び1902号」にて、建築基準法第21条「大規模の建築物の主要構造部等」の柱・梁に対して追加されました。

その後の改正によって、今では外壁も燃えしろ設計を用いて設計することは認められています。

例えば、30mmの杉板を木造の柱+構造用合板の上に施工すると、計算上は、45分間、柱を火炎から保護でき、たとえ柱が構造計算上、必要最低限の断面サイズであったとしても、45分の認定が獲得できる可能性があります。

つまり、燃えしろ設計の考え方を利用して、外壁材を木材にすることで耐火建築物を木造にできる可能性が拡がったということです。

ポイント

国土交通大臣の認定を受けている材料を選ぶと、木造耐火建築物へ採用できる外壁材は限られますが、構造・工法として大臣認定を受ければ、メーカー問わず外壁材を選べます。

つまり、耐火建築物・準耐火建築物においても、天然木材を外壁材として使える可能性があるということです。

木は燃えやすいイメージがあるかもしれませんが、厚みのある木材は、1分あたり1mm程度しか燃えず、表面が炭化すれば、自らを耐火被膜する“火に強い”材料です。

そのため、耐火建築物・準耐火建築物の外壁へも、ぜひ木材利用をご検討ください。







木造耐火建築物の外壁に木材は使用できる?

法22条区域・延焼ライン内の材料|外壁・軒裏を板張りにできる?


「建築基準法第2条9号の3のロ」および「建築基準法施行令第109条の3(主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の耐火性能を有する建築物の技術的基準)」では、耐火建築物・準耐火建築物の外壁は耐火構造とすると定められています。

ただし、外壁と他の部材との接合部を耐火構造とし、耐火被膜をするなど性能基準を満たしていれば木造にもできます。

つまり、先ほど紹介した燃えしろ設計を用いるか、外壁材へ認定不燃木材を用いれば基準をクリアできるということです。

ちなみに、住宅など小規模建築物においては、全てを耐火構造とする必要はありません。

  • 「延焼のおそれのある部分」以外の部分
  • 「外壁の開口部上端から上方3m以内かつ両端から左右それぞれ1.5m以内に、建築基準法施行令第112条第1〜5・9項の規定による耐火構造の床または壁(防火上主要な間仕切壁を除く)があり、さらにこの範囲に他の開口部がある場合は、その上端から上方2m以内かつ両端から左右それぞれ50cm以内の外壁部分」以外の部分
  • 建築基準法第2条第9号の3のロに該当する簡易耐火建築物の外壁を、耐火構造もしくは防火構造とした部分

(参考:国土交通省|耐火建築物又は簡易耐火建築物の外壁に外装材として木材を取り付ける場合の取扱いについて


上記に書かれている「延焼のおそれのある部分」とは、隣地境界線等から、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある建築物の部分を指します。

炎症の恐れがある部分
(引用:国土交通省|今後の建築基準制度のあり方について「木造建築関連基準等の合理化及び効率的かつ実効性ある建築確認制度等の構築に向けて」


簡単にまとめると、住宅の場合は、隣家に延焼するリスクが少なく、火災の際に真っ先に主要構造部へ火が回らない範囲であれば、外壁材に木材を使っても良いということです。

延焼のおそれがある部分(通称:延焼ライン)の内側にある外壁の仕上げに木材を使いたい場合は、「準防火性能の技術的基準に適合する(国土交通大臣認定を受けた仕様とする)」ことが証明されている認定不燃材を使用するか、外壁を二重構造にする必要があります。

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まとめ

耐火建築物・準耐火建築物に関する規定は、建物利用者を火災から守り、近隣への延焼を最小限に抑えるためのルールです。

昨今の木造建築促進の動きも強まり、耐火建築物への法整備が進められています。

そのため、条件さえクリアすれば、耐火建築物を木造にしたり、外壁仕上げに木材を使えるようになってきているのです。

“柏田木材”は、国内外から良質な木材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材を提案。

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