「地産地消を“建築”で実現」10のメリットや関連する補助金を紹介
住宅、商業施設、教育施設、福祉施設など、建物用途限らず、県産材や地域材の採用例が増えています。
しかし、そのメリットを知らない方も少なくないはずです。
そこで、今回は建築で地産地消を実現させるためにキーポイントとなる「県産材・地域材」について、使うメリットや機になる疑問を詳しく解説します。
“柏田木材”の商品も紹介しますので、高品質の木質建材をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
● 県産材・地域材を建築に取り入れて“地産地消”を実現することで、経済面・環境面・社会面におけるメリットを得られます。
● 県産材・地域材を使う場合は、補助金をうまく活用することをおすすめします。
● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、県産材・地域材を利用した高品質な木質建材を製造しています。
コンテンツ
建築に関連する地産地消|県産材・地域材とは?
“地産地消”と聞くと、食品などを連想するかもしれませんが、建築においても重要なキーワードです。
なぜなら、戦後に植林された人工林の木々は、およそ80年経ち、まさに伐採に適した時期に差し掛かっているからです。
地産地消とは、「地域生産」と「地域消費」を合体させた言葉で、その土地で生産活動が行われた材料を消費し、地域経済の活性化や輸送エネルギーの削減を実現させることが目的です。
日本は国土の約2/3を森林が占める世界でも稀な国であるため、林業の歴史は古く、江戸時代初期まで遡ります。
日本の林業は技術が高く、良質な木材を生み出します。
国産材だけではなく、さらに地域を限定した「県産材・地域材」の利用も進んでおり、木材における“地産地消”は重要な取り組みと言って間違いありません。
製紙業・エネルギー業でも国産材利用が進んでいますが、木材を最も利用するのが「建設業」です。(参考:日本製紙連合会|木材調達に対する考え方 |木材の有効利用木材原料の内訳)
事実、製紙用パルプやペレットへ製材端材や建築廃材が二次利用されている事例も増えています。
つまり、建築において国産材・県産材・地域材の活用が進めば、日本の木材自給率向上へ大きな影響を与えられるのです。
採用事例が増えている理由
建築において、国産材・県産材・地域材の利用が促進された背景には、「木材利用促進法」の制定があります。
「木材利用促進法」とは、2010(平成22)年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の通称です。
本法(「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」)は、国が公共建築物における木材の利用の促進の基本方針を策定し、「可能な限り、木造化、木質化」を進めるという方向性を明確に示し、地方公共団体や民間の事業者等に対しても国の方針に即した主体的な取組を促すものです。
このような措置は、全ての公共建築物に一律に木造化、木質化を義務づけるものではありませんが、国が率先して木造化、木質化に努め、必要な施策を総合的に展開すること等により、公共建築物以外の建築物も含めて広く木材利用の拡大を目指すものです。
(引用:国土交通省|公共建築物等における木材 の利用の促進に関する法律)
当初は、法題の通りその対象は公共建築が主でしたが、2021(令和3)年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と改正されて以後、対象が“全ての建築物”へ拡充されました。
※ 詳しくは、「木材利用促進法」とは?改正までの経緯や目的・関連する補助金について解説」をご参照ください。
この法律の中では、WHO協定の「内外無差別の原則」と整合性をとるため、国産材の利用を優遇したり、輸入材利用を排除する内容はありません。
しかし、「国内において生産された木材その他の木材」と明記して、国産材利用の重要性を謳っています。
このような政府の施策に加え、建物へ国産材・県産材・地域材を取り入れることのメリットが知れ渡り始め、採用事例が増えているのです。
国内有数の林業が盛んである「奈良県」では、教育施設や老人ホーム、観光施設への、県産材・地域材活用事例が豊富です。
私たち“柏田木材”も、そんな奈良県に拠点を構え、吉野杉・吉野桧などの銘木を使い、良質な内装材をご提供しています。
〈参考ページ〉
県産材・地域材を使う“10”のメリット
国産材、特に身近な場所で育った県産材や地域材の活用は、地球環境・地域環境・建物・企業それぞれに多方面でメリットをもたらします。
では、それぞれ詳しく解説します。
「カーボンニュートラル・脱炭素への貢献」
その土地で育った樹木を、近くの製材所で加工し、同じ地域の現場で活用すると、運搬時に必要なエネルギーを大幅に削減できます。
建物に使う木材の全てを輸入材で賄う場合と比較すると、排出される二酸化炭素量は、雲泥の差です。
「森林の健全な循環」
1997年に京都で締結された「京都議定書」には、森林活性化による二酸化炭素の森林吸収源確保が明記されています。
このことからも、森林の活性化が地球環境保全へ大きな効果をもたらすことは明白です。
国産材・県産材・地域材を利用すると、国内林業が活性化し、木々が定期的に伐採されると、森の良好な循環が生まれます。
森林の多い日本には、木々が健やかに成長する環境を整える責務・育った木々を使う責務があります。
そのため、建築の担う役割は大きいとされているのです。
「多様な生物の生息地・良質な水資源の確保」
森林の担う役割は、木材を生み出すだけではありません。
森林の活性化は、多様な生物の生息地や良質な水資源を守るためにも重要です。
森林の水源かん養機能は、水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化といった機能からなり、雨水の川への流出量を平準化したり、あるいは、おいしい水を作り出すといった森林の働きです。
(中略)
雨水が森林を通って土壌に染み込み、最後に渓流に流出するまでに、リンや窒素などの富栄養化の原因となる物質は、土壌中に保留されたり、植物に吸収されたりする一方で、土壌中のミネラル成分などがバランス良く溶け出すことにより、森林はおいしい水を作り出すと考えられます。
このような森林の働きは、水質の浄化機能と呼ばれています。
(引用:林野庁|水を育む森林のはなし)
「自然災害防止・気候緩和効果」
森林は、自然保護の観点だけではなく、地滑りや洪水などの災害から私たち生き物の生活環境を守ることもできます。
樹木が地面に根を広げると、「地表の侵食」や「表層崩壊防止」の発生を防ぎ、森林周辺の気候緩和効果(暑さや寒さの緩和・乾燥緩和・強風緩和)を得られる点がメリットです。(参考:林野庁|森林の適切な整備・保全)
「地域経済の活性化・雇用確保」
県産材や地域材の利用は、林業・製材業を生業とする地方経済の活性化をもたらす点もメリットです。
また、高齢化が深刻な林業における若者雇用確保への効果も期待されており、木材自給率上昇とともに、林業従事者の数は回復傾向が見られます。(参考:林野庁|林業労働力の動向)
「林業・製材業の技術継承」
長い歴史を持つ日本の林業・製材業において、後継者不足は深刻で、高い技術の継承断絶が大きな懸念点です。
この点においても、県産材・地域材の利用、ひいては森林地域の経済活性化が重要視されています。
「所有者不明林増加の改善」
国土交通省の調べによると、日本に現存する森林のうち、約60%が私有林です。
近年、私有林所有者の不在村化や高齢化が深刻で、令和2年度に国土交通省が行った調査では、登記簿上所有者が不明な土地のうち、林地の占める割合は29.8%にまで上ります。(参考:林野庁|所有者不明森林等の特例措置活用のためのガイドライン)
所有者が分からなくなり、荒廃が進む山林が増えている。
国土交通省はこのほど、2050年までに新たに最大47万ヘクタールの森林が「所有者不明」になるとの推計をまとめた。
所有者や境界がはっきりしないと間伐や林道整備もままならないうえ、林業の集約も進まない。
(引用:日本経済新聞|山林の荒廃どう防ぐ 2050年までに「所有者不明」47万ヘクタール)
地域の林業が活性化すると、所有者不明林においても「森林経営管理法」に基づき、自治体主導のもと、森林整備が進み、森の荒廃を食い止められます。
「高品質な材料の安定的な確保」
2021年に起こったウッドショックはまだ記憶に新しいでしょう。
その際、木材が高騰しただけではなく、納期遅延も深刻な問題となりました。
その対策としても、国産材・県産材・地域材の活用は有効です。
県産材・地域材を含む国産材の価格は、林野庁の関与によってある程度コントロールされているため、輸入材ほど急に高騰することはありません。
また、自国で生育・伐採・製材している材料は、世界情勢による影響を受けにくいため、良質な材料を安定して確保できるのです。
「建物の存在意義を高める・地元から愛される建物に」
地元で育った木を建築へ取り入れることで、樹木が長年この世に残り続け、地域利用者からも愛着を持たれる建物になります。
実際、県産材や地域材は、幼稚園・保育園・小学校などへ多く使われており、教育の観点からも活用されています。
「企業の社会的イメージアップ」
今や、「環境問題への取り組み」は、顧客による企業選定やプロジェクトの評価において重要なチェックポイントです。
近年増えている建築分野のESG投資においても、木材利用や国産材利用、建築時のCO2排出削減への貢献度が重要視されているのが現状です。
これらの観点からも、県産材・地域材の積極的利用は、企業の社会的イメージ向上やCSR実現に効果があると言えるでしょう。
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県産材・地域材利用に関する補助金
県産材・地域材の活用促進は、国の重要な施策であるため、補助事業が行われています。
また、以下の都道府県では、独自の補助金がありますので、県産材・地域材を使う際は、ぜひ詳細をご確認ください。
- 福井県(県産材を活用したふくいの住まい支援事業(新築)・県産材のあふれる街づくり事業(民間施設))
- 埼玉県(県産木材活用住宅等支援事業)
- 福岡県(ふくおか県産材家づくり推進助成制度)
- 富山県(とやまの木で家づくり支援事業)
- 新潟県(新潟県産材の家づくり支援事業)
- 岐阜県(ぎふの木で家づくり支援事業(県内新築タイプ)・ぎふの木で家づくり支援事業(県外新築タイプ))
- 広島県(県産材消費拡大支援事業)
- 宮城県(県産材利用サステナブル住宅普及促進事業(住宅支援)・県産材利用サステナブル住宅普及促進事業(リフォーム支援))
- 長野県(木づかい空間整備事業 ※令和5年度は未実施)
- 石川県(いしかわの森で作る住宅推進事業・いしかわの木を活かす民間施設普及拡大事業)
- 静岡県(しずおか木の家推進事業)
- 山梨県(県産材利用促進事業費補助金)
- 岩手県(いわて木づかい住宅普及促進事業・いわての木があふれる空間づくり事業補助金)
上記はあくまでも一例ですので、設計デザインに伴い建築材料を選ぶ際は、支給対象となる事業がないか役所等へお問い合わせください。
都道府県単位ではなく、市町村単位で行われている事業もあります。
“柏田木材”のある奈良県は、吉野杉や吉野桧の産地として知られ、林業が盛んな地域です。
そのため、建築場所を県の内外問わず対象となる補助事業を行なっています。
奈良県産の木材を利用したい方は、「奈良の木を使用した住宅助成事業」をぜひご活用ください。
県産材・地域材から創られる高品質な“柏田木材”の木質建材
私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。
木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決するだけではなく、地球環境に配慮した建材製造を行っています。
1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。
木工所として培った経験を活かした“県産材・地域材”の活用
柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。
以下のような地産材を用いた実績がございますので、ぜひご相談ください。
- 奈良県産杉
- 奈良県産桧
- 信州産唐松
- 吉野杉
- 吉野桧
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立地による“リーズナブルな価格”の実現
私たちが工場を構えるのは、奈良県五條市。
銘木として知られる吉野杉の産地とも近い、林業・製造業が盛んな地域です。
そのため、良質な木材を最低限の輸送コストで入手できるため、お客様にもコスパの高い木質内装建材をご提供できます。
倉庫管理による“施工効率性アップ”
羽目板材などは長尺な建材であるため、現場での置き場確保にお困りのケースは少なくありません。
早めに納品すれば、作業スペースに影響がでてしまうこともあるでしょう。
柏田木材では、材料の一時保管場所として、自動倉庫による管理を導入しています。
必要なものを必要なタイミングで現場へ納品できるため、施工効率性アップが期待できるだけではなく、工期遅延のリスクを防げます。
全工程を自社工場で行う“品質安定性”
木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行っているため、品質のばらつきや手作業による人工の増加、工程間での運搬による時間や費用のロスを最小限に抑えられます。
全工程を自社で管理しているため、高い品質安定性を保証できる点が私たちの誇りです。
多彩で環境に配慮した“塗装レパートリー”
塗装も自社で行っているため、仕上げ選定についてもぜひご相談ください。
複数種の塗装サンプルの作成や、オリジナル着色のご提案など、豊富な塗装レパートリーを組み合わせ、お客様のイメージを実現化するお手伝いをいたします。
また、「バイオマスボイラー」による自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なUV塗装・オスモUV塗装の導入によるVOC削減など、環境へ配慮した技術も積極的に導入しています。
工期・予算・デザインに合わせた“材料選定のご提案”
柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。
そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで一貫したサポートをご提供。
「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。
● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
● ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。
● お客様からの材料支給にも対応いたします。
● 加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて行います。
● お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。
まとめ
県産材や地域材の利用は、地域経済を活性化するだけではなく、森林の良好な環境維持など、自然に対するメリットもあります。
国や自治体は、法整備や補助事業の実施を通して、県産材・地域材の利用を推進しています。
建築プロジェクトの社会的価値を高めるためにも、ぜひその土地にゆかりのある材料をご採用ください。
“柏田木材”が、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材をご提案いたします。
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。