木材は塗装で“不燃化”できる?建築基準法との関係や塗料の種類を解説
建築基準法の制限を受ける店舗やホテル、その他公共施設で内外装へ木材を使いたい場合には、材料選びに注意が必要です。
しかし、細かな決まりが分かりにくく、種類もいくつかあるため、材料選定にお悩みの方も多いでしょう。
そこで、今回は「木材の不燃化」について、制限を受ける建物の範囲や、不燃木材・不燃塗装木材について、木材のプロが詳しくお話しします。
木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
● 内装制限・外装制限の対象となる建物の仕上げに木材を使用する場合は、“不燃化”が欠かせません。
● 不燃木材の表面劣化を防ぐためには、不燃塗装が必要です。
● 不燃塗装は高い技術と十分な乾燥が必要なので、現場塗装ではなく工場塗装がおすすめです。
● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、県産材・地域材を利用した高品質な木質建材を製造しており、不燃塗装をはじめとした特殊塗装も全て自社工場で行なっています。
コンテンツ
「木材の不燃化」が必要な建物は?材料選びの注意点
木材は金属やコンクリートなどの無機質素材と比べると、燃焼するリスクがあります。
そのため、建築基準法では建築物へ木材を使用できる範囲を定めています。
この規定は、「内装制限」「外装制限」と呼ばれ、仕上げ材へ木材を使用する場合に大きく関係するルールです。
内装制限
「内装制限」とは、建築基準法 第35 条の2(特殊建築物等の内装)で定められた規定を指します。
第三十五条の二
別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。
(引用:e-Gov法令集|建築基準法)
「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物」とは、具体的に以下の建物を指します。
- 劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場
- 病院・診療所(患者の収容施設があるもののみ)
- ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎
- 学校・体育館
- 百貨店・マーケット・展示場・キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー・ダンスホール・遊技場
- 倉庫
- 自動車車庫、自動車修理工場
法文だと分かりにくいですが、これらの建物の室内壁・天井仕上げには、延焼や煙の発生を抑えて施設利用者が安全に避難できるように、「防火材料」を用いなくてはいけないということです。
外装制限
「外装制限」は、建築基準法第21条(大規模の建築物の主要構造部等)に該当する建物に対して課せられる制限です。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、その主要構造部を通常火災終了時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて通常の火災が消火の措置により終了するまでに通常要する時間をいう。)が経過するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、その周囲に延焼防止上有効な空地で政令で定める技術的基準に適合するものを有する建築物については、この限りでない。
(引用:e-Gov法令集|建築基準法)
具体的には、以下の建物が対象です。
- 地階を除く階数が4以上である建築物
- 高さが16mを超える建築物
- 別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物で、高さが13mを超えるもの
※「内装制限」の対象となる建物と同様 - 延べ面積が3,000㎡を超える建築物
建物規模や該当する条件によって細かい規定は異なりますが、耐火構造・準耐火構造・防火構造・準防火構造の外壁や、建築基準法第27条の1(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)や、第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物)に当てはまる建物の外壁材には、その防火性や耐火性を公的に認定された材料を用いなくてはいけません。
内装制限・外装制限で木材は使える?
内装制限や外装制限の対象となる範囲には、「防火材料」を用いなくてはいけません。
防火材料の条件は、建築基準法施行令第108条(防火性能に関する技術的基準)で明確に定められています。
第百八条 法第二条第八号の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。
一 耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
二 外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。
(引用:e-Gov法令集|建築基準法施行令)
ポイントは、その性能に関する規定はあっても、素材を限定する内容ではないという点です。
そのため、法令で定めた条件を満たせば、木材も使用できます。
ただし、そのままの状態では使用できず、「不燃化処理」が欠かせません。
内装制限・外装制限の対象となる建築物には、不燃木材が用いられており、温もりのあるウッドデザインを取り入れる建物が多く存在しています。
「不燃木材」と「不燃塗装木材」はどう違う?
内装制限・外装制限にかかわる建築物に用いられる木材は、「不燃木材」と呼ばれます。
調べてみると、「不燃塗装木材」というキーワードも見かけるでしょう。
この二つは混同されがちですが、全く異なる材料です。
【不燃木材】
ホウ素系(ホウ酸)や、リン酸系(リン酸アンモニウム)等の不燃薬剤が注入された木材で、注入量によって不燃・準不燃・難燃と認定種類が変わります。
国土交通大臣の認定を受けている不燃木材であれば、内装制限や外装制限の建物に使用できます。
【不燃塗装木材】
不燃塗料は、「防火材料に塗布してもその防火性が下がらない(燃焼を早めない)」ものであり、通常の木材を“不燃化”するものではありません。
そのため、あくまでも「不燃木材への塗布」が条件です。
不燃木材の表面劣化を防ぐために用いられます。
柏田木材では、不燃木材への不燃塗装を、“自社施工”にて高い品質で現場へお届けしています。
塗料の種類|防火・耐火・不燃・準不燃・難燃・防炎の違い
不燃木材の防火性や耐久性を維持するために欠かせないのが、「不燃塗装」です。
用いられる塗料にはいくつかの種類があるため、言葉の意味を正確に理解して適切な仕上げ材を選ばなくてはいけません。
【防火塗料】
「不燃塗料・準不燃・難燃塗料」の総称で、基材(基本的に有機系材料)に塗布することで、不燃材料・準不燃材料・難燃材料の防火性能を維持できます。
【耐火塗料】
基材(基本的に鉄骨)に塗布することで耐火構造とできる塗料を指し、木材へは用いられません。
【不燃塗料】
750℃の温度下において加熱開始後“20分”の間に「燃焼しない」「防火上、有害な損傷を生じない」「避難上、有害な煙またはガスを発生しない」性能を持ち、不燃基準を満たしていることが認定されている塗料です。
【準不燃塗料】
750℃の温度下において加熱開始後“10分”の間に「燃焼しない」「防火上、有害な損傷を生じない」「避難上、有害な煙またはガスを発生しない」性能を持ち、準不燃基準を満たしていることが認定されている塗料です。
【難燃塗料】
750℃の温度下において加熱開始後“5分”の間に「燃焼しない」「防火上、有害な損傷を生じない」「避難上、有害な煙またはガスを発生しない」性能を持ち、難燃燃基準を満たしていることが認定されている塗料です。
【防炎塗料】
防火塗料にはなりませんが、ホウ酸系防炎成分が配合されており、木材が燃えた際の煙を抑えられます。
不燃認定を受けた「不燃防炎塗料」もあります。
「不燃材料として認定を受けた材料なら、現場でどんな塗装をしてもいい」と思われがちですが、国土交通省では、不燃材料に不燃塗料を塗装した場合も、“塗装品”として新たな認定を受けなくてはいけないケースもあります。
そのため、木材の選定だけではなく、その仕上げとなる塗料の選定もとても重要です。
不燃木材・不燃塗装を採用する際の注意点
不燃木材や不燃塗装が普及したことで、法的な制限のかかる建物でもデザインの幅が広がりました。
ただし、加工されていない木材と比べると、風合いや扱い方が少々異なります。
事前に特徴を把握した上で、設計デザインに取り入れましょう。
主な注意点は以下の通りです。
- 不燃木材に注入される難燃剤は水溶性薬剤がほとんどなので、空気中の湿気を木材表面に引き寄せて含水率を高めてしまう可能性がある
- 湿度や温度が変動する現場塗装では、塗膜の硬化不良や、不燃木材に注入された難燃剤が表面に浮き出て結晶化する白華現象のリスクがある(施工直後は目視できなくても、時間が経過して現れる場合も)
さらに、不燃木材への塗装不具合を最小限に抑えるためには、以下のような施工を徹底する必要があります。
「リードタイムは最短で」
発注から納品までの工程をできるだけ短期間で行うことで、不燃木材の白華現象発生を未然に抑えます。
「塗布量管理」
不燃木材へ塗装する場合、塗布量が少なすぎると白華現象の原因になります。
現場での手作業では、塗布量が安定しないリスクがあります。
「乾燥スペースの確保」
不燃塗料は他の塗料よりも乾燥時間がかかるため、想定された強度を得るまでに、十分な乾燥スペースを確保しなくてはいけません。
不燃木材への塗装は、現場施工も可能ですが、材料の質が変わる可能性があるだけではなく、施工技術にもムラがあります。
そのため、工場塗装がおすすめです。
柏田木材では、高品質な塗装済み不燃木材をご提供するために、以下の点を重視しています。
● 現場の工程に合わせた納品手配を徹底し、最短のリードタイムで材料をご提供しています。
● 高性能塗装設備を備えた自社工場にて、一定の動きと圧力による均一な塗膜を実現しています。
● 広い自社工場内にて塗装を適切な状態に乾燥させ、一般的な倉庫に加え、自動倉庫からベストタイミングで現場へ材料をお届けします。
高い塗装技術を持つ“柏田木材”の木質建材
私たち柏田木材は、木質建材への加工だけではなく、各種防火塗装やUV塗装も含めた特殊塗装も、全て自社で行なっています。
複数種の塗装サンプルの作成や、オリジナル着色のご提案など、豊富な塗装レパートリーを組み合わせ、お客様のイメージを実現化するお手伝いをいたします。
また、バイオマスボイラーによる自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なオスモUV塗装の導入によるVOC削減など、環境へ配慮した技術も積極的に導入しています。
木質建材やその塗装仕上げで迷っている方は、ぜひ私たちまでご相談ください。
天然木突板貼り不燃パネルという選択肢も
建物の屋内で内装制限の対象となる範囲には「天然木突板貼り不燃パネル」という選択肢もあります。
天然木突板貼り不燃パネルとは、不燃性のあるパネル材に天然木を厚さ0.2mmにスライスした突板(つきいた)と呼ばれる素材を貼り合わせた化粧パネルです。
不燃木材と同様に表面は天然木の色味や質感そのものですが、特徴に違いがあります。
比較項目 | 不燃木材 | 天然木突板貼り不燃パネル |
---|---|---|
質感 | ・無垢材と同様の柔らかい質感 ・分厚い塗膜の塗装も可能(重厚感や高級感) | ・無垢材よりも硬く冷たい質感 ・薄い塗膜の塗装が基本(軽やかでカジュアルな印象) |
価格帯 | ・かなり高価 (10,000円/㎡〜) | ・樹種によって価格は変動するが比較的安価 (6,000円/㎡〜) |
形状 | ・面取り加工、殴り加工、目透かし加工など様々な形状に対応可 →自由度が高い ・不燃パネルよりも分厚くなるため、重量があり細かい納まりに対応しづらい | ・面取り加工、殴り加工、目透かし加工など表面に凹凸の出る加工は対応不可 →表面材(突板)が薄いため、平面的な形状以外には不向きで自由度は低い ・厚さ6mmのラインナップがあるため、材料の軽量化がはかれて細かい納まりにも対応できる |
耐用年数 | ・施工環境によっては薬剤が溶け出すことでの白華リスクあり ・使用環境が整っていれば不燃パネルよりも耐用年数は長い | ・屋内施工が原則 ・使用環境による耐用年数の変動リスクは不燃木材ほどない ・突板と基材の接着面が経年劣化するため、不燃木材よりも耐用年数は短い |
樹種 | ・杉と桧が大半で樹種のレパートリーは少ない | ・国内外の様々な樹種に対応できるため、レパートリーは多い (柏田木材では40樹種以上のラインナップあり) |
納まりやご予算に応じて、不燃木材と不燃パネルどちらか適切な材料を選定しましょう。
柏田木材では不燃木材・天然木突板貼り不燃パネルの両方を取り扱っているため、現場・設計プランごとに最適な不燃材料を提案させていただいております。
納まりや塗装加工などのご相談も承っておりますので、材料選定でお悩みの方もお気軽にご相談ください。
まとめ
内装制限や外装制限のかかる建築物においては、ウッドデザインを取り入れる際に材料選定の面で注意しなくてはいけません。
単に不燃木材を取り入れるだけでは、白華現象をはじめとした不具合が発生して、後からクレームにつながるリスクもあります。
不燃木材を塗装すると不具合の発生は防げますが、現場塗装では十分な対策にならない可能性があります。
そのため、均一な性能確保や工程の効率化ができる「工場での不燃塗装」がおすすめです。
“柏田木材”は、国内外から良質な木材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材をご提案しています。
塗装も全て自社で行なっていますので、多彩な塗装ラインナップより、ご要望に合うものをご提供できる点が強みです。
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
品質・コスト・エコ全てにこだわりたい方は“柏田木材”へご相談を
私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。
1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。
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● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
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● お客様からの材料支給にも対応いたします。
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柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。
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