【杉板外壁を後悔しないためのポイント】デメリット・対策や経年変化について解説
最近は、戸建住宅だけではなく中規模以上の公共的な建物にも採用されている「杉板外壁」。
“木”を取り入れたデザインがトレンドであるため、設計への採用を検討している方も多いでしょう。
ところが、デザイン面以外のメリットやデメリットはあまり知られていません。
そこで、今回は「杉板外壁」のメリットやデメリットとその対策、そのほか、「寿命・経年変化・塗装・シロアリ・焼杉」に関する気になる疑問について詳しく解説します。
木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
● 「杉板外壁」は、ナチュラルなデザインが魅力ですが、他にも性能面・機能面においてメリットがあります。
● 「杉板外壁」を採用する際は、デメリットや注意点とその対策を知っておくことが重要です。
● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、国産材・県産材・地域材を利用した高品質な木質建材の製造販売や、特注製品・OEM製品の開発支援を行っています。
コンテンツ
杉板外壁の特徴とメリット
日本では古くから寺などの歴史的建造物へ、耐久性・防虫性の高い杉板が外壁材として用いてきました。
時代の流れとともに、モルタルや塗装、金属系・窯業系サイディングなど、そのほかのリーズナブルな外装材が増え、一時は杉板外壁を取り入れる事例は減少しましたが、最近はウッドデザインがトレンドになったこともあって、住宅だけではなく商業施設などにも採用されるようになりました。
では、杉板外壁のメリットを紹介します。
ぬくもりあるナチュラルな風合い
無垢材ならではのぬくもりあるナチュラルな風合いは、木目を“プリントした”外装材では表現できません。
ランダムな色合いや木目と柔らかく吸い付くような触り心地は、まさに天然素材ならではの魅力です。
経年と共に変色し趣が増す様子は、金属系外壁材やモルタル外壁では表現できない重要な特徴と言えます。
条件次第では長持ち
木材は、腐朽やシロアリによる蟻害のリスクが高いと思われがちです。
ところが、杉には「セドロール」という殺虫・防虫成分が多く含まれており、調湿作用も高いため、木材の中でも特に腐朽や蟻害に強いとされています。
乾燥しやすい環境下では、50年以上長持ちするケースもあるほどです。
経年変化とともに銀白色、そして最後には黒色へ変化しますが、変色したからといって寿命を迎えた訳ではありません。
黒ずんだ色によって外観に深みを与え、それが趣となります。
杉板外壁が長寿命であることは、神社仏閣など歴史的建造物で使われていることから立証済みと言えるでしょう。
雨に当たりやすい外壁へ杉板を採用する場合は、防虫剤や防腐剤が注入された材料や、表面保護のための塗装が施された材料を使うと、さらに長寿命となり、メンテナンスサイクルを伸ばせます。
張り方を変えれば和風建築・洋風建築どちらにも馴染む
杉板外壁は、板材の張り方によって印象が変わります。
例えば、「縦張り」にすると和風な印象になり、「横張り」にすると洋風な印象に仕上がります。
また、「ヘリンボーン張り」などデザイン性の高い張り方にすると、個性的でモダンな印象になるので、採用事例は少なくありません。
張り方だけではなく、板材の幅によっても雰囲気が変わるため、杉板外壁にする場合は、材料や施工方法にもこだわりましょう。
部分的な張り替えが容易
モルタル塗装仕上げの外壁や大判のALC板を外壁材へ用いると、補修する際に、ある程度広い範囲をやりかえなければいけません。
そして、サイディング材や塗料などの工業製品は、生産ロットによって同じ品番でも色味が変わることもありますし、数年経つと廃盤になります。
それに対して、杉板外壁は板材を一枚ずつ張っているため、部分的な張り替えが容易で建物の維持コストを抑えられます。
また、天然素材である杉板はもともと色ムラや木目によってランダムな仕上がりになるため、時間が経てば補修箇所が目立たなくなりますし、廃盤になることもありません。
そのため、まさに“サスティナブルな外壁材”と言えるでしょう。
環境負荷(ライフサイクルC02)が少ない
杉板は「100%天然素材」であるため、LCCO2(ライフサイクルCO2)が少なく、環境負荷軽減に貢献できます。
段階 | CO2を減らす効果 |
---|---|
植林・育林 | 樹木は生育の過程で多くのCO2を吸収して抱え込み、逆にO(酸素)を放出します。 |
製材・加工 | 素材を国内で加工でき、ほかの素材と比べて製材過程で消費されるエネルギー量が少ないため、CO2排出量を少なく抑えられます。 |
運搬 | 国産材を利用すれば、海を渡る長距離の運搬が必要ないため、CO2排出量を大幅に削減できます。 |
再使用(リユース) 再利用(リサイクル) 再生産(リデュース) | 役目を終えた木材や端材は、燃料用チップなどに“再使用”でき、パーティクルボードなどの原料として“再利用”できます。 そして、最終的には微生物等によって分解されて、森林の肥料として、“再生産”へ繋げることも期待できます。 |
杉板外壁が普及すると、森林のサイクル(植林→伐採→利用→植林…)が活性化し、よりCO2削減効果が高まるとされています。
国産材・地産地消にこだわれる
日本は、国土面積のおよそ70%(2,505万ha)を森林が占めており、そのうち、人の手によって植林・育林されている人工林は約40%(1,020万ha)です。
その中でも、杉が植えられている人工林面積は44%(444万ha)と、最も広い面積を誇り、伐採される杉は、その約70%が製材用と言われています。
つまり、杉は国内で最も多く製材用として育てられている樹種であるということです。
そのため、「国産材にこだわった建物にしたい」という方にこそ、杉板外壁をおすすめします。
国産材というカテゴリーにとどまらず、産地を都道府県・市区町村まで限定できる点も杉材の魅力です。
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杉板外壁のデメリットと対策|変色・カビ
杉板外壁にはデザイン面・環境面においてメリットがありますが、採用する際に知っておくべきデメリットや注意点もあります。
杉板の特性を踏まえて、設計デザインへ取り入れてください。
変形リスクがある
直射日光や雨に長時間当たる場所は、湿潤・乾燥を繰り返すため、木割れやねじれ、反りなどの変形リスクは高めです。
そのため、多くの事例では、インナーバルコニーの下や軒下など、紫外線や雨に当たりにくい場所へ採用します。
変形リスクを少しでも抑えるためには、伐採後にじっくり時間をかけて乾燥させた自然乾燥材・低温人工乾燥材を選びましょう。
高温で急速に乾燥させた木材よりも品質性が高く、施工後も伸縮しにくいという特性を持ちます。
変色する
杉板外壁は、施工後にまず銀白色へと退色し、その後、黒色へ変わっていきます。
これは、変色(変質)することで腐朽菌を寄せ付けない特性であり、カビなどによるものではありません。
つまり、黒色に変色した杉板外壁は、強い耐候性を発揮するということです。
環境によっては腐朽菌・カビ・藻が発生する
防虫性が高く腐朽しにくい杉材でも、雨が当たる場所や地面から近く湿りやすい場所には注意が必要です。
北面で風通しの悪い場所や、雨水が跳ね返る地面に近い部分は、腐朽菌・カビ・藻の発生を避けられません。
木の腐朽菌とカビ菌は、以下の条件が揃うと繁殖しやすくなります。
・酸素のある場所(水中などでは腐朽菌もカビも繁殖しない)
・気温5〜30℃の環境(30℃前後が最も繁殖に適した温度)
・大気中の湿気が多く木材の含水率が20%以上(湿度20%以下だと繁殖しにくい))
そのため、杉板外壁はこれらの条件が揃いやすい場所にはおすすめしません。
外部に用いられる杉板材は、防水・防腐処理されていますが、それらの効果は永続的ではないため、環境によっては「3〜5年に一度程度」表面の保護塗装が必要です。
また、腐朽しにくい・カビにくい材料を選ぶことも重要です。
丸太の中央に近い芯材(赤身・赤太)の方が防腐・防虫・殺菌力が高く、内部までしっかり乾燥した含水率の低い低温人工乾燥材をおすすめします。
準防火地域・防火地域や法22条指定区域では使用制限も
杉板外壁自体には耐火性がないため、繁華街や幹線道路・駅に近い場所、都市部の住宅密集地が指定されている「準防火地域・防火地域・法22条指定区域」では採用できない可能性があります。
ただし、外壁下地に不燃材を使うなどの方法で防火性を上げれば、建築基準法の規定をクリアすることもできます。
「準防火地域・防火地域・法22条指定区域」内の建物へ杉板外壁を採用する際は、建築基準法の詳細や自治体の規定を細部まで確認しましょう。
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施工コストが高い
一日の広い面積を一気に施工できるモルタル外壁や大判パネル張りとは異なり、杉板外壁は板材を一枚ずつ取り付けていかなくてはいけません。
そのため、施工コストが割高になる可能性があり、さらに高い施工技術が必要です。
これらのことから、杉板外壁を施工できる建築会社は限定されます。
私たち“柏田木材工業”では、メーカーとして製造依頼を受けるだけではなく、お客様のご要望や課題をうかがいながら、開発支援やOEM製品の受注も承っております。
中規模・大規模建築物へ杉板外壁を採用したい方で、施工の効率化や品質安定化を高めたい方は、ぜひ弊社までご相談ください。
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最後に、杉板外壁の採用を検討している方からよくいただく質問を紹介します。
Q.杉板外壁の寿命はどのくらい?
多くの事例で採用される金属系・窯業系サイディングの耐用年数が15〜30年なのに対して、杉板はメンテナンスさえきちんとすれば、50年以上長持ちします。
実際に、神社仏閣などの歴史的建造物では、傷んだところを部分張替えしながら、100年以上現存している杉板外壁が多数あります。
ただし、板材端部は維管束が露出しているため、水分を吸い取りやすく、腐朽したりシロアリ被害を受けやすいので、金属製アングルでカバーするなどの工夫が必要です。
Q.杉板外壁の経年変化は?30年後・50年後はどうなる?
杉板外壁の経年変化は、基本的に変色のみです。(直射日光や雨が当たりやすい場所は変形する可能性がありますが、これは全ての場所へ均一に発生する現象ではありません。)
変色しただけでは劣化とは言えないため、意匠的に気にならなければそのまま放置しても問題ありません。
満遍なく変色することはほとんどないため、経年変化による色ムラが気になる場合は、着色塗装しましょう。
経年変化による銀白色を最初から表現したい場合は、既に灰色化した状態の杉材を利用するのもおすすめです。
塗装によって灰色化できる塗料もあり、そちらを塗ると、経年変化後の質感や耐久性を得られます。
Q.杉板外壁は塗装と無塗装どちらがいい?
杉材は、比較的、防腐・防虫・防カビ性が高いため、風通しが良く湿っていない環境では、表面保護のための塗装は必要ありません。
無塗装は、再塗装が不要なので、モルタル塗装仕上げや金属・窯業系サイディングよりも、メンテナンスコストがかからない点は大きなメリットです。
一方、意匠面で着色塗装する場合は、3~5年周期で塗り替えましょう。
直射日光が上がる場所や雨ざらしの場所は、さらに短いサイクルで塗装しなおさなくてはいけない可能性があります。
Q.杉板外壁にするとシロアリが寄ってこない?
防虫性の高い杉板ですが、外壁に張ったからと言って家全体のシロアリ防止にはなりません。
また、腐朽菌・カビと同様に、酸素があり温かく湿った場所では、いくら杉板であっても蟻害に遭ってしまいます。
公共施設などでこまめな点検やメンテナンスが難しい建物へは、防腐・防虫(防蟻)剤を注入した杉板がおすすめです。
Q.焼杉外壁が人気って本当?メリットは?
焼杉とは、杉板を焼き加工して表面を炭化させた材料です。
表面を炭化させることで「耐久性・耐火性・防虫性・防腐性」がアップします。
また、意匠面でも人気で、黒い見た目は、シンプルモダンな外観と相性がよく、和風建築から現代的な洋風建築まで幅広く採用されています。
高品質な“奈良の杉板”は柏田木材にご相談を
柏田木材は、1950年に杉・桧の林業が盛んな奈良県五條市にて創業し、それ以降、高品質な外壁用杉板を製造・販売してまいりました。
特に、「吉野杉」から作られた杉板は、木目が詰まっているため、変形しにくく防蟻性・防カビ性・防腐性・断熱性が高いというメリットを持ちます。
吉野杉の産地から近い場所へ自社工場を構えているため、リーズナブルな価格で良質な杉板材を提供できるのが、弊社の強みです。
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大ロットのサイズ・形状・塗装カスタマイズも可能
柏田木材は、自社製品を製造販売するだけではなく、木製品のOEM製造や特注仕様の開発支援・製造も行っています。
そのため、まとまった杉板材のカスタマイズ加工もご相談ください。
- サイズ(長さ・厚さなど)のカスタマイズ
- 形状(実加工など)のカスタマイズ
- 不燃木材の不燃塗装
- 着色塗装(オリジナル色の調合も)
- 機能性塗装(撥水塗装・UV塗装など)
そのほか、自動倉庫での材料保管代行や在庫管理、工程に合わせた出荷対応など、トータルで現場をサポートいたしますので、ぜひご相談ください。
まとめ
杉板外壁は、意匠面・環境面においてメリットがあり、サスティナブル建築の普及と共に、人気が再燃しています。
ただし、採用する際には、施工やメンテナンスに関するデメリットや注意点を知っておくことが重要です。
また、長持ちさせるためには、最適な材料を選ばなくてはいけません。
“柏田木材”は、国内外から良質な木材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材を販売しています。
塗装も全て自社で行なっていますので、多彩な塗装ラインナップより、ご要望に合うものを提供できる点が強みです。
「設計デザインに杉板外壁を取り入れたいが、耐久性やメンテナンスなどが心配」
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
品質・コスト・エコ全てにこだわった“柏田木材”の木質建材
私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。
1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。
自社製品の製造販売だけではなく、木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。
● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
● ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。
● お客様からの材料支給にも対応いたします。
● 加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて行います。
● お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。
“県産材・地域材”の活用
柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。
以下のような地域材の活用実績がございますので、ぜひご相談ください。
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- 吉野杉
- 吉野桧
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立地による“リーズナブルな価格”の実現
私たちが工場を構えるのは、奈良県五條市。
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そのため、良質な木材を最低限の輸送コストで入手できるため、お客様にもコスパの高い木質内装建材をご提供できます。
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