〈奈良県が世界に誇る“吉野杉”の内装材〉特徴やメリットは?そのほか気になる疑問を解説
“吉野杉”は、日本が世界に誇る銘木で、高品質な建築資材や木工製品の材料として活用されています。
しかし、名前だけは知っていても、その特徴まで知らないという方は多いはずです。
そこで、今回は“吉野杉”の特徴やメリット、多くの方が気になるQ&Aを解説します。
高品質の木質建材をお探しの方や、国産材利用に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
●「吉野杉」は、歴史ある林業技術によって生み出されており、強度や意匠性が高い樹種です。
●「吉野杉」を内装に生かすことで、“9つ”のメリットが得られます。
●私たち「柏田木材」は、奈良県で1950年に創業以来培った高い製造技術を活かし、高品質でディテールにまでこだわった“木質内外装材”を製造しています。
コンテンツ
吉野杉はどこでとれる?特徴は?
吉野杉は、“日本三大人工美林”である奈良県の吉野林業地帯(吉野川上流の川上村・東吉野村・黒滝村一帯)に生息する杉です。
この土地では、室町時代(1500年頃)から林業が盛んで、独自の手法である「密植」と「こまめな間伐」が行われてきたことでも知られています。
「密植」
他の地域で行われている林業では、成長を早く促すために、1ヘクタールあたり苗木を3,000本植えるのが基準です。
一方、吉野林業では、1ヘクタールあたり8,000〜12,000本と密度高く植林します。
すると、幹の上部・下部の太さが均等で真っ直ぐな樹木に育ちます。
「こまめな間伐」
密植といっても、木が健やかに成長するためには、ある程度の間隔が必要です。
木の間隔を適切な状態に保つために、他の林業地よりも細やかに間伐を行います。
苗木を植えてから70年位までは「3〜5年周期」、その後、「7〜10年周期」、「15〜20年周期」と何度も作業を繰り返し、丁寧に育てることで、樹齢に合わせた高品質な木材が生まれます。
「密植」と「こまめなな間伐」によって、吉野林業地域で育つ杉材は、じっくり年月をかけて成長するため、年輪の幅が詰まっていて均等かつ通直です。
木目が均等に詰まっているということは、密度が高いということ。
そのため、高耐久・高強度・変形しにくい(歪みにくい)のが特徴です。
杉は、比重の重いナラやカシなどと比べると、軽く加工がしやすい分、強度が低いと思われがちですが、杉材の中でも吉野杉は、ヤング係数が高いというデータが出ています。
スギは比較的弱い木材と言えますが、奈良県産のスギはそうではありません。
スギのヤング係数の全国平均値は E70 ですが、奈良県産材の平均値はその1.3倍の E90 です。
奈良県産材は年輪幅が狭く、密度が高いためにヤング係数も高くなっています。
(引用:奈良の木とは)
そのため、昔から主要な建物の構造材として使われ、大阪城や伏見城をはじめ数百年経った今でもしっかりと現存しています。
最近はブランド木材として名が知られているため、太く長い無垢の構造材はとても希少です。
そのため、主に内装材・仕上げ材として使われています。
吉野杉を内装材に取り入れるメリット
吉野杉は、古くから建築の構造材だけではなく、内装材にも活用されてきましたが、その理由は、いくつものメリットがあるからです。
では、それぞれ詳しく見てみましょう。
木目が美しい
「密植」と「間伐」によって、下の枝は成長とともに自然と枯れ落ちるため、節が少なく年輪が均等な木に育ちます。
そのため、木目が密で直線的なのです。
心材(中心部に近い部分)は、他の産地とは異なり少しピンク味のある色味が特徴で、辺材(樹皮に近い部分)は、上品で爽やかな白が魅力です。
心材と辺材のコントラストも、「吉野杉は美しい」と言われる所以でもあります。
木目とカラーの両方が優れた樹種のうちの一つです。
変形しにくい
無垢材は、施工した周辺の温度・湿度環境によって歪みや反りなどの変形を起こします。
しかし、木目が詰まって密度の高い吉野杉は、そのリスクが比較的低いことで知られています。
また、吉野杉材は仕上がりよりも敢えて一回り大きく裁断し、木の強度高めて木割れや変形を防ぐために、じっくり乾燥させる点もポイントです。
良材が多くとれる
国産材、特にブランド化されている木材は、良質なものが多いです。
その中でも、吉野杉はじっくり育ち、節が少ないため、一本の樹木から多くの良質材がとれます。
防虫性が高い
木材の天敵であるシロアリは、密度が低く柔らかい木を好みます。
その点、吉野杉は杉材の中でも密度が高いため、シロアリにとってはあまり食べやすいとは言えないのです。
また、杉にはシロアリが嫌がる匂い成分(精油成分)「フィトンチッド」が多く含まれるため、そもそもシロアリを寄せ付けません。
防カビ性・抗菌性・抗ウイルス性が高い
奈良県の調査によると、吉野杉には、カビや細菌の増殖抑制効果、ウイルスの不活性化効果があることが分かっています。
その理由は、匂い成分(精油成分)「フィトンチッド」が多く含まれているからです。
ダニの忌避効果も立証されているため、アレルギー症状の改善にも寄与できることが期待されています。
(参考:奈良県|奈良の木で健康パンフ)
断熱性が高い
この特徴は吉野杉に限らず、木材全般に共通します。
天然木材の熱伝導率、“熱の伝わりやすさ”は、アルミニウムのおよそ1/1,750と、高い断熱性を持ちます。
グラスウールの半分程度の断熱性があるということです。
(材質) | (熱伝導率 W/(m/K)) |
アルミニウム | 210 |
コンクリート | 1.6 |
石膏ボード (P.Bボード) | 0.60 |
ガラス | 1.0 |
ビニル系床材 | 0.19 |
天然木材 | 0.12 |
グラスウール断熱材(10K相当) | 0.05 |
この理由は、木材の細胞には断熱効果のある空気が無数に集合しているからです。
特に杉材の断面1㎤には、4万〜30万個もの細胞が集合していると言われており、それらが高い断熱性を生み出しています。
調湿効果がある
木の細胞や植物繊維の主成分は、セルロースやヘミセルロースなどの炭水化物です。
炭水化物には水分を集める特質があり、周囲が多湿の場合は湿気を吸い取り、乾燥時にはそれを空気中に放出します。
そのため、天然木材はその空間を調湿する効果があるのです。
通気性・防水性がある
杉材は、古くから建築資材だけではなく、様々なものへ活用されています。
例えば、柾目は寿司桶、板目は酒樽や船の材料として古くから使われています。
その理由は、通気性・防水性があるからです。
目・耳に優しい
木材は紫外線を多く吸収し、ほとんど反射させないため、目への刺激を軽減し、白内障や加齢黄斑変性の発症を抑えます。
特に吉野杉にはその効果が高く、可視光線である赤外線の反射量も他の木材より少ないことが分かっています。
また、木材は音を吸収する特性もあるため、大きな音を柔らかくする効果も。
そのため、音楽ホールの内装仕上げ材に用いられることも多いです。
匂い成分による鎮静・リラックス効果がある
杉の香り成分「フィトンチッド」には、脳活動や自律神経活動を鎮静化する効果があることが分かっています。
木の香りを嗅ぐと、副交感神経活動が活発化するため、人はリラックス状態になるのです。
無塗装に近いほど効果が高いというデータも出ています。
吉野杉は、このフィトンチッドを多く含むため、内装に取り入れると居心地の良い空間になります。
吉野杉に関する気になるQ&A
吉野杉は世界的に知られている良質な木材ですが、建築へ採用する際にいくつかの疑問が湧く方も多いでしょう。
そこで、ここでは多くの方が気になる点についてお答えします。
吉野杉の値段は高い?
吉野杉には多くのメリットがある一方で、ブランド木材としてのイメージが強く、高価と思われがちです。
確かに、他の国産杉材と比べると、原木価格は決して安くありません。
杉・原木(国産材)の平均価格 | 16,100円/m3 (2021年) |
吉野杉・原木の平均価格 | 17,500〜23,000/m3 (2021年) |
ただし、数々のメリットを考えると、決して損ではありません。
むしろ、良材が多く取れるため、材料にこだわる場合は、材料が確保しやすく、歩留まりや生産効率が良いと言えるでしょう。
ご予算に合わせて、吉野杉と他の杉材をうまく使い分けることが重要です。
柏田木材は、お客様のご予算に合わせた材料の選定や代替樹種のご提案をしております。
また、施工コストを抑えるためのOEM製造・特注製造も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
吉野杉にデメリットはある?
吉野杉は、針葉樹の一種なので、広葉樹と比べると柔らかく、キズが付きやすい点は否定できません。
ただし、硬い木は重く加工がしにくいため、施工面では不利になることも。
吉野杉は杉材の中でも密度が高く硬い上に、広葉樹と比べると軽量で加工しやすいため、多くの施設において内装材として採用されています。
表面の細かいキズや汚れを防ぐために、保護塗装を施すのもおすすめです。
柏田木材は、自社工場にて全ての塗装工程を行なっています。
表面保護に特化したUV塗装やハードコート塗装、微妙な風合いを表現できる着色塗装などをご用意していますので、お気軽にご相談ください。
吉野杉を内装に使っても花粉症は関係ないって本当?
全国平均で15.6%もの人が発症している花粉症。
原因の代表格とされているのが杉花粉ですが、製材後は花粉が飛散しないため、杉材を内装に使っても、全く問題ありません。
花粉症は花粉が体内に入り、免疫システムによって異物と判断されて、抗体が生成され、それが蓄積されて飽和状態になると、アレルギー反応を引き起こす症状。
そのため、花粉が体内に入らない限り、症状が出ることはないのです。
ただし、ごく稀に樹液などに触れることで杉アレルギーを発症してしまう方もいるため、公共施設に採用する場合は、表面塗装を施すなど、リスク抑制への工夫をしておくと良いでしょう。
奈良県には吉野杉以外も良質な木材が豊富
奈良県の良質な木材は、吉野杉だけではありません。
吉野桧(ひのき)も銘木として知られています。
また、トチノキ・ケヤキ・サクラ・ナラ・クリなども生息し、針葉樹だけではなく広葉樹の植林も進んでいます。
歴史ある林業の経験と知識を活かし、いくつもの樹種が生息している奈良県。
高品質な内装材をお探しの方は、1950年に奈良県で創業して以来、時代と共に様々な木製製品の製造を手掛けてきた“柏田木材”までご相談ください。
柏田木材では、自社製品の製造に加え、「OEM」「特注製造」「新技術の開発」を行なっています。
吉野杉を使った内装材は“柏田木材”にお任せください
私たち「柏田木材工業株式会社」は、1950年に奈良県で木工所として創業して以来、多くの木製品の開発・製造支援を行ってきました。
木製製品のOEM・特注製造・製品開発支援を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。
国産材利用にも積極的に取り組んでおり、吉野杉をはじめとして、以下のような地産材を用いた実績がございます。
- 吉野杉
- 吉野桧
- 奈良県産杉
- 奈良県産桧
- 信州産唐松
「国産材・地産材でこんな製品が作りたい」というご要望も“柏田木材”でしたら、実現できます。
〈関連コラム:国産材利用でSDGs達成を目指す。メリット・デメリットから活用方法まで徹底解説〉
●加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。
●ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。
●お客様からの材料支給にも対応いたします。
●加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて対応いたします。
●お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。
木材に関するすべての工程を自社にて対応し、倉庫管理の代行によって運送距離や回数を減らすことで、運搬エネルギーの削減を実現できます。
また、自社工場は銘木として知られている「吉野杉・吉野桧」の産地と近いため、高品質な木材から作られた製品を最小限の運搬エネルギーでご提供できる点も強みです。
「バイオマスボイラー」による自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なUV塗装・オスモUV塗装の導入によるVOC削減など、様々なアプローチで環境に配慮。
総合的に高品質製品の製造と地球環境保護に取り組んでいます。
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、1950年創業以来“木工所”として培ってきたノウハウと環境開発でしっかりサポート。
木材利用の可能性を広げることで、環境保全へ貢献しています。
まとめ
吉野杉は歴史ある銘木ですが、その魅力は単なる“ブランド力”だけではありません。
古くから培われた林業技術が生み出す「強度・美しさ」、樹種が本来持つ「防虫性・通気性・防水性」などの性質の両方を兼ね備えています。
内装材に取り入れるメリットは多いため、住宅や公共施設など様々な場所に採用されている点もポイントです。
“柏田木材”は、長年培った経験と知識を活かし、ディテールにまでこだわり抜いた内装を製造しています。
ご予算に合わせた材料のご提案や、施工効率性の向上に関するご提案を承っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
高い加工技術で、あなたの理想を叶えます。