〈“地域創生”を簡単解説〉目的・事例や建築との関係について

地方創生とは?取り組み事例と建築との関係性を簡単解説


メディアで取り上げられることも多い「地域創生」という言葉ですが、漠然とした意味は知っていても、実際の取り組みや海外との違いについてはあまり知らないという方も多いはずです。

また、地方創生や地域振興など、似たような言葉も見かけます。

そこで、今回は「地域創生」の概念や取り組み事例、実現に向けて大きく関係する建築業界との関わりまで、詳しく解説します

環境に配慮し、地域貢献できる設計デザインを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

コラムのポイント

● 地域創生とは、国・都道府県・市町村、そして企業が協力し合いながら、少子高齢化や地域の過疎化、経済格差解消を目標とする包括的な取り組みです。

● 国土の2/3を森林が占める日本においては、建築の木造化・木質化や、国産材の利用が地域創生に有効とされています。

● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、国産材・県産材・地域材を利用した高品質な木質建材を製造しています。



地域創生とは?地方創生・地域振興との違い

地方創生とは?地域創生・地域振興との違い


地域創生と地方創生は、ほとんどの場合、同じ意味として使われます。

少子高齢化が進む日本において、人口減少を食い止めるために、それぞれの地域で快適な生活を送るための環境を整え、東京圏の人口集中を是正するのが目的です。

首都圏だけではなく地方まで“持続可能性(サスティナビリティ)”を持つ魅力的な街にして、日本社会の活力を維持することを目指しています。

この背景には、東京圏の人口過密や地方の過疎化だけではなく、収入格差があります。

総務省の調査によると、東京圏の人口超過率は、10代後半から20代が最も多く、2010年以降増加する一方です。(参考:内閣府|地方創生の現状と今度の展開

また、世帯収入は最も多い関東地方と九州地方では、およそ30%もの差があるというデータもあるほどです。(参考:内閣府|地域間の経済格差とその要因

地域間の収入格差解消が地域創生の課題
(参考:内閣府|地方創生の現状と今度の展開



少子高齢化・地域間での経済格差を解消すべく、政府が取り組み始めたのが地域創生(地方創生)
で、一気に進むきっかけとなったのが、2014年の「まち・ひと・しごと創生法」制定です。

法文には、地域創生の原則「自立性・将来性・地域性・直接性・結果性」を踏まえて、以下6点の目標が挙げられています。

  • 所得を地方で確保できる職場を作る
  • 都心と地方の繋がりを作り、人口過密を軽減する
  • どの地域でも結婚・出産・子育てをしやすい環境を整える
  • 人が集まり、安心して住める魅力ある地域を作る
  • 脱炭素社会に向けたSDGs(持続可能な開発目標)実現を目指す
  • 誰もが活躍できる地域社会の推進を目指す



似た言葉に、地域振興や地域活性化、まちおこしなどがありますが、これらは地域創生や地方創生の結果として、その地域を活気づける取り組みを指し、運営する団体によって使い分けられています。

ポイント

地域創生とは、それぞれの地方が少子高齢化に対応すべく、「まち・ひと・しごと」を活性化させていくための取り組みで、各地域が特徴や強みを生かした自律的かつ持続可能な社会実現が目的です。

そのため、一時的な人口増加だけではなく、地域経済を活性化して、永続的に人が暮らしやすくできるかどうかがポイントになります。

国は国土形成計画、県は総合計画、市町村は振興計画を作成し、互いが協力しながら地域創生に取り組んでいます。






日本の取り組み事例や方法

地方創生・日本の取り組み事例


地域によって具体的な取り組みは異なりますが、主に以下7つの方法で地域創生が行われています。

デジタル田園都市国家構想総合戦略

これまで、地方は「働き口がない」という理由で人口減少が続いてきましたが、コロナ禍を機にリモートワーク・テレワークが普及して、若者から地方移住への注目が高まっています。

政府はこれをチャンスと捉え、地方から優先的にデジタル化を進め、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を実現すべく、各府省庁が2023年度から2027年度までの5か年計画を進めています。

  • 光ファイバーの世帯カバー率:99.9%(2027年度)
  • 5Gの人口カバー率:95%(2023年度)、97%(2025年度)、99%(2030年度)
  • サテライトオフィス等を設置した地方公共団体:1,000団体(2024年度まで)、1,200団体(2027年度まで)
  • デジタル技術も活用し相談援助等を行うこども家庭センター設置市区町村:全国展開(1,741市区町村)を目指す
  • 1人1台端末を授業でほぼ毎日活用している学校の割合:100%(小学校18,805校、中学校9,437校)(2025年度)
  • 新たなモビリティサービスに係る取組が行われている地方公共団体:70%(約3万5千事業者)(2025年度)
  • 物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、物流DXを実現している物流事業者の割合:70%(2025年度)
(引用:内閣官房ホームページ|デジタル田園都市国家構想




地方経済の核となる中堅・中小企業のサポート

地方に人を呼び込むためには、雇用を確保しなくてはいけません。

その中核を担うのが、地元の中堅・中小企業です。

政府は、地方経済を支える企業に対して、以下のサポートを行っています。

  • 海外輸出の戦略案作成支援など、活躍部隊の国際化をサポート
  • 研究機関と連携した製品の開発や生産力アップのサポート
  • 外国企業による地方への投資促進
  • 知的財産に関する相談窓口の開設や人材支援
  • 教育機関による国際人材の育成
  • 雇用関連の助成制度拡充
  • 後継者不足解決に向けた事業引き継ぎセンターの設置
  • 外国人材の受け入れサポート

(参考:経済産業省|地方の中核となる中堅・中小企業への支援パッケージ




移住支援金・起業支援金の支給

東京23区に在住もしくは通勤する人が東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)外へ移住するか、移住した上で起業した場合に、一定額の支援金を支給する取り組みを行っています。

都心部から地方へ移住して起業した場合は、最大で300万円(単身者は最大260万円)支給されるため、人口過密軽減や地方経済の活性化が期待されています。

(参考:内閣府地方創生サイト|地方へ移住しよう 地方で起業しよう


ふるさと納税

多くの方が利用している「ふるさと納税」も、地域創生に向けた取り組みのうちの一つです。

これまで、東京圏に人が集中しているため、人口減少が著しい地方は税収を確保することが困難でした。

その状況を打開するために、住んでいる自治体とは異なる自治体に寄付すると、その代わりに所得税の還付や住民税の控除が受けられます。

ふるさと納税によって、住民の少ない地域でも魅力的な特産品や取り組みがあれば、お金が集まる仕組みができたのです。


エリアマネジメントの実施

地域をエリア分けして、民間によって都市計画やまちづくり、地域経営を行う仕組みです。

地域再生エリアマネジメント負担金制度によって、活動への支援も受けられます。

エリアマネジメントとは、特定のエリアを単位に、民間が主体となって、まちづくりや地域経営(マネジメント)を積極的に行おうという取組みです。現在、民主導のまちづくり、官民協働型のまちづくりへの期待から、大都市の都心部、地方都市の商業地、郊外の住宅地など、全国各地でエリアマネジメントの取組みが実践されています。

(引用:内閣府地方創生サイト|地域再生エリアマネジメント負担金制度




地方創生人材支援制度

地方創生人材支援制度とは、地域の活性化を促すために、地方公共団体へ「意欲と能力のある国家公務員・大学研究者・民間専門人材」を市長や尊重のサポート人材として派遣する制度です。

自治体からの派遣受け入れ希望を受け、各省庁や教育機関、民間企業と自治体のマッチングをサポートしています。

特に、地域のデジタル化における人材派遣事例が増えています。


クールジャパン

クールジャパン戦略とは、世界からクール(かっこいい)と受け止められる日本の強みや魅力を活かしてブランド力を高め、地方へ海外需要を集める取り組みです。

各自治体がインバウンドを取り込むために行っている取り組みや、高品質な特産品を海外に向けて情報発信しています。

地方に海外からの観光客を誘致するだけではなく、グローバルニッチ企業の活性化も促すことで、季節などに左右されない安定的な経済効果を想定できる点もポイントです。

(参考:内閣府|クールジャパン戦略について




海外の取り組み事例

地方創生・海大の取り組み事例


海外でも都市部の人口過密による地方経済の低迷が問題視されており、それぞれの国で様々な取り組みが行われています。

例えば、国土の広いアメリカでは、古くから道州制を導入して、それぞれの地域が独自の法律に基づき、成長を競い合う方法が用いられていることはご存知の方も多いでしょう。

ドイツでは、農業集落再編成政策の実施やデジタル技術とイノベーションの活用、そして、若者の地域定住促進を積極的に実施しています。

イタリアは、各地方が特産物であるチーズやワインの販売ターゲットを、国内マーケットではなく世界のマーケットに設定し、ブランド化に成功しています。

この取り組みは日本の自治体も参考にしているところがあり、愛媛県・今治市のタオルや、岡山県・倉敷市のデニムは、世界中で高品質のイメージを作り上げることに成功しています。


ポイント

柏田木材のある奈良県も、良質な木材を産出する地域としての地位を確立しており、吉野杉や吉野桧などの銘木は、国内だけではなく海外の建築現場で使われています。





地域創生と大きく関係する“建築の木造化・木質化”と“国産材利用”

地域創生実現をサポートできる“国産材利用”


日本は、世界中の国々の中でも国土に対して森林の占める割合が多い“森林大国”と言われています。

国土の2/3もある森林の約4割が、木材を作るために管理されている人工林であり、そのうちの7割は、主に建築資材へ加工される杉・桧の育つ森です。

森林大国である日本の人工林
(引用:林野庁|スギ・ヒノキ林に関するデータ


日本では飛鳥時代から寺院や住宅に木材を利用してきた長い歴史があります。

江戸時代からは計画的な森林経営が行われており、日本の林業は高い技術や知恵を現代まで継承し続けているのです。

そのため、日本産の木材は、世界でも高品質であることが知られており、産地や樹種によって高値で取引されています。

ところが、日本の木材自給率は、改善の兆しが見えているものの、未だ41.1%(2021年時点)にとどまっているのが現状です。

ポイント

政府は、地域創生実現に向けた有効な手段のひとつに、「国産材・地産材の活用」を挙げています。

森林地域やその周辺の経済が活性化することで、地方から日本経済の立て直しをはかり、局地的な人口過密解消を目的としています。

森林の計画的かつ継続的な伐採・植林は、生き生きとした森を維持する上でも欠かせません。


このことからも、森林の多い日本においては、地域創生へ建築がもたらす影響が大きいことは明らかです。

事実、近年は住宅だけではなく、中規模以上の公共施設・商業施設の木造化や木質化が進んでいます。(参考:林野庁|建築物の木造化・木質化事例、参考資料


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「地域創生・エコ・品質・コスト」全てにこだわりたい方は“柏田木材”へご相談を

木材


私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。

1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。


自社製品の製造販売だけではなく、木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。

柏田木材・5つのお約束

● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。

● ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。

● お客様からの材料支給にも対応いたします。

● 加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて行います。

● お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。



“国産材・県産材・地域材”の活用

柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、国産材はもちろん、さらに地域を限定した県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。

以下のような地域材の活用実績がございますので、ぜひご相談ください。

  • 奈良県産杉
  • 奈良県産桧
  • 吉野杉
  • 吉野桧
  • 信州産唐松


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立地による“リーズナブルな価格”の実現

私たちが工場を構えるのは、奈良県五條市。

銘木として知られる吉野杉の産地とも近い、林業・製造業が盛んな地域です。

そのため、良質な木材を最低限の輸送コストで入手できるため、お客様にもコスパの高い木質内装建材をご提供できます。

倉庫管理による“施工効率性アップ”

羽目板材などは長尺な建材であるため、現場での置き場確保にお困りのケースは少なくありません。

早めに納品すれば、作業スペースに影響がでてしまうこともあるでしょう。

柏田木材では、材料の一時保管場所として、自動倉庫による管理を導入しています。

必要なものを必要なタイミングで現場へ納品できるため、施工効率性アップが期待できるだけではなく、工期遅延のリスクを防げます。


全工程を自社工場で行う“品質安定性”

木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行っているため、品質のばらつきや手作業による人工の増加、工程間での運搬による時間や費用のロスを最小限に抑えられます。

全工程を自社で管理しているため、高い品質安定性を保証できる点が私たちの誇りです。


高い塗装技術

柏田木材は、木質建材への加工だけではなく、各種防火塗装やUV塗装も含めた特殊塗装も、全て自社で行なっています。

複数種の塗装サンプルの作成や、オリジナル着色のご提案など、豊富な塗装レパートリーを組み合わせ、お客様のイメージを実現化できる点が弊社の強みです。

また、バイオマスボイラーによる自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なオスモUV塗装の導入によるVOC削減など、環境へ配慮した技術も積極的に導入しています。



工期・予算・デザインに合わせた“材料選定のご提案”

柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。

そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで一貫したサポートをご提供。

「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。




まとめ

地域創生は、日本の持続可能性を高めるために欠かせない取り組みです。

国ができること、地域ができること、そして、企業ができることはたくさんあります。

特に、森林地域の多い日本においては、その資源を活用して経済効果を生み出す「国産材利用」が重要な鍵です。

そのため、設計デザインを検討する際は、木造化・木質化に加え、国産材利用も是非ご検討ください。

“柏田木材”は、国内外から良質な木材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材をご提案しています。

塗装も全て自社で行なっていますので、多彩な塗装ラインナップより、ご要望に合うものをご提供できる点が強みです。

「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」

「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」

「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」

「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」

そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。







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