【不燃木材】メリット・デメリットや建築基準法との関係について解説

【不燃木材】メリット・デメリットや建築基準法との関係性について解説


住宅だけではなく、商業施設・教育施設・公共施設の木質化が進んでいますが、そこで多く用いられるのが「不燃木材」です。

しかし、その詳細や無加工木材との違いを知らない方も多いでしょう。

そこで、今回は「不燃木材」の種類やメリット・デメリット、建築基準法との関係性、その他、白華現象や屋外利用など、設計デザインの際に気になる疑問について、木材のプロが詳しくお話しします。

木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

コラムのポイント

● 主に不燃木材と呼ばれる材料は、不燃薬剤を染み込ませたものを指します。

● 不燃木材にはメリットだけではなくデメリットもあるため、それを軽減するための不燃塗装が欠かせません。

● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業以来、県産材・地域材を利用した高品質な木質建材を製造しており、不燃塗装をはじめとした特殊塗装も全て自社工場で行なっています。



不燃木材とは?作り方や種類

不燃木材とは?作り方や種類


「不燃木材」とは、ホウ素系(ホウ酸)や、リン酸系(リン酸アンモニウム)などの不燃薬剤を注入処理した木材
を指すのが一般的です。

不燃薬剤の注入量によって、「不燃材料・準不燃材料・難燃材料」として認定されています。

ただし、それ以外にも木材を用いた不燃・準不燃・難燃材もありますので、それぞれの特徴を見てみましょう。

〈不燃薬剤が含浸されている材料〉

こちらが最も一般的な不燃木材で、無垢材へ不燃薬剤を注入します。

質感が無垢材に最も近く、不燃認定・準不燃認定・難燃認定を受けた材料レパートリーが豊富です。

〈基材に不燃材料を用いている材料〉

不燃パネルを基材として、表面に無垢材を薄くスライスした突板を貼り合わせている材料です。

表面は天然木そのものですが、0.25mm程度と極薄なので、触り心地は天然木と少々異なります。

〈木材に不燃塗料を施した材料〉

無垢材に不燃効果のある塗装を施したものですが、現場塗装では認定を受けられず、工場塗装の材料でも不燃認定を受けたものはありません。

塗膜が不燃になるだけでは建築許可は受けられず、不燃木材や不燃パネルを用いることが基本的な考え方です。




コラムのポイント

無垢材の質感や風合いを最も表現できるのは、不燃薬剤を浸透させた不燃木材です。

ただし、耐久性や意匠性を維持するためには、表面の保護塗装などが必要で、使用する塗料によっては認定を受けた材料でも、建築基準法の規定をクリアできない可能性もあります。

そのため、不燃木材へ塗装する場合は、専門家による工場塗装がおすすめです。




不燃木材が必要な理由|建築基準法の「内装制限・外装制限」

UV塗装のデメリット


不燃木材を使わなくてはいけないケースは、建築基準法における「内装制限」「外装制限」の対象となる建物の材料に木材を使用する場合です。

内装制限は建築基準法第35条第2項、外装制限は第21条に明記されています。

第35条の2

別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。

(引用:e-Gov法令集|建築基準法


第21条 

次の各号のいずれかに該当する建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、その主要構造部を通常火災終了時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて通常の火災が消火の措置により終了するまでに通常要する時間をいう。)が経過するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、その周囲に延焼防止上有効な空地で政令で定める技術的基準に適合するものを有する建築物については、この限りでない。

(引用:e-Gov法令集|建築基準法


ポイント

内装制限の対象となる主な建物は、特殊建築物とされる不特定多数の人が利用する劇場や大型商業施設、病院、学校などが該当します。(建築基準法「別表第一(い)欄」参照)

外装制限の対象は、主に4階以上の建物や延べ面積が3,000㎡を超えるメートルを超える建物です。

そのため、ほとんどの中規模以上の公共施設・商業施設には、内装仕上材や主要構造部へ不燃材料(防火上支障のない材料)を使わなくてはいけません。



建築基準法施行令では、不燃材料の定義は「加熱されても一定時間、燃焼しないもの・耐火上有害な変形や亀裂など損傷を生じないもの・避難上有害な煙やガスを発生させないもの」とされています。(参考:国土交通省|不燃材料を定める件

ここでポイントなのは、不燃・準不燃・難燃認定を受けた木材であれば、内装制限や外装制限の対象建築物でも使用できるという点です。

ウッドインテリアや中規模以上の建築物における木質化が進んでいる中、不燃木材は高い注目を受けています。


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不燃木材のメリット・デメリット

UV塗装の種類


一般的に用いられている含浸系の不燃木材を仕上げ材として選定する際には、事前にメリット・デメリットを把握しておくことが重要です。

では、それぞれ詳しく解説します。


メリット

不燃木材の最も大きなメリットは、仕上げ材料に制限を受ける範囲にも“天然木”を使用できるという点です。

不燃認定を受けた突板化粧板や木目がプリントされたパネル材もありますが、それらと比べても、質感や触り心地は本物とあまり遜色ありません。

また、万が一火災が起きて燃えてしまった場合も、木材なので有毒ガスが出ないところもポイントです。


デメリット

不燃薬剤を染み込ませた不燃木材のデメリットは、薬剤が表面に浮き出て結晶化する“白華現象”です。

施工直後は確認できなくても、時間の経過とともに発現する可能性があります。

また、不燃薬剤は水溶性がほとんどなので、空気中の湿気を引き寄せて木材の含水率を高めてしまい、反りなどの変形をもたらすリスクも否めません。

そして、現場塗装が難しい点もデメリットと言えるでしょう。

不燃木材の性能を確保するためには、均一な塗膜厚さを保った不燃塗装が必要なためです。

そして、薬剤を染み込ませるため、無垢材よりも比重が若干ですが増加する点も注意してください。


ポイント

柏田木材では、不燃木材のデメリットである白華現象や含水率アップを防ぐための不燃塗装を“自社施工”にて行っています。

塗装済み不燃木材をお探しの方は、ぜひご相談ください。





不燃木材に関する気になるQ&A|白華現象・屋外利用・デザイン性

不燃木材に関する気になるQ&A|白華現象・屋外利用・デザイン性


「設計デザインに不燃木材を取り入れたいが、本当に不具合が起きないか心配」という方も少なくないはずです。

そこで、多くの方が気になる疑問にお答えします。


Q.「白華現象は防げる?」

A.「表面に不燃塗装を施すことで、防火性を維持しながら白華現象を防げます」

表面に薬剤が滲み出てくるのを防ぐためには、不燃塗装が有効です。

ちなみに、一部、白華現象が起こらない“白華レス不燃木材”もありますが、コスト的に採用しやすいものはリン酸グアニジン薬剤を用いたもので、こちらも100%白華現象を防げるものではありません。

また、湿度の影響を受けやすい場所では、白華現象のリスクは高まります。

ケイ酸系(ガラス塗料含侵)を使用した不燃木材は、高確率で白華現象を防げますが、コストが莫大なため、ホウ酸系・リン酸系を用いた不燃木材に不燃塗装を行うことがコスト的に現実味のある方法だと言えるでしょう。

これらのことからも、コスト的に現実味のある方法は、「不燃木材+不燃塗装」と言えるでしょう。


Q.「屋外利用はできる?」

A.「屋外利用はできますが、表面の保護塗装は必須です」

木材に浸透している薬剤は水溶性なので、雨にさらされる場所では、経年とともに流れ出て、防火性能が落ちてしまいます。

また、褪色によって意匠性も損なわれる可能性があるため、不燃塗料による保護塗装は欠かせません。


Q.「見た目や質感は変わる?」

A.「無加工の木材と比べると色・触り心地・香りに違いがあります」

杉などに不燃薬剤を注入すると、少し飴色に変化します。

ただし、白木の状態よりも深みのある色合いになるため、意匠的に懸念されるケースはほとんどありません。

触り心地は、木材内部の細かい空気孔が薬剤で満たされるため、熱伝導率が上がり(=断熱性が下がり)、少し冷たく感じる可能性があります。

ただし、プリント化粧版や突板化粧板と比べても、それほど気になるレベルではありません。

そして、薬剤の匂いが木の香りよりも際立ってしまう点にも注意しなくてはいけませんが、表面を塗装すると、薬剤の匂いはかなり軽減されます。

この点からも、不燃木材を内装仕上げ材として使う場合も、表面塗装が必要と言えるでしょう。


Q.「不燃木材に着色できる?」

A.「木目を生かした着色塗装も可能」

不燃塗料はウレタン塗料を主に用いますが、お好みの色へ着色することはできます。

ウレタン塗装以外にも施工性の高い浸透系塗料(キシラデコールUA)もありますが、こちらはスプレー塗装できず、耐久性はウレタン塗料よりも劣る点は注意しましょう。


ポイント

現場塗装ではいくら施工技術が高くても、性能維持には限界があります。

そのため、ぜひ柏田木材の高品質な工場塗装品をご検討ください。

弊社では、高品質な塗装済み不燃木材をご提供するために、以下の点を重視しています。

● 現場の工程に合わせた納品手配を徹底し、最短のリードタイムで材料をご提供しています。

● 高性能塗装設備を備えた自社工場にて、一定の動きと圧力による均一な塗膜を確保しています。

● 乾燥に時間がかかる塗装工程も、広い乾燥スペースを確保して効率的に塗装することで、短納期・大量生産の対応が可能です。






まとめ

不燃木材は、内装制限や外装制限のかかる建築物においては欠かせない建築材料です。

ただし、不燃木材には白華現象が起こるというデメリットがあります。

これらの発現を抑える方法として有効なのが、不燃塗装です。

工場塗装された不燃木材でしたら、高い意匠性・防火性を維持できます。

“柏田木材”は、国内外から良質な木材を仕入れ、長年培った経験と知識を活かし、お客様のご予算・設計デザインに合う木質建材をご提案しています。

塗装も全て自社で行なっていますので、多彩な塗装ラインナップより、ご要望に合うものをご提供できる点が強みです。

「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」

「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」

「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」

「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」

そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。




品質・コスト・エコ全てにこだわった“柏田木材”の木質建材

木材


私たち“柏田木材工業株式会社”は、建材を中心に木製品の開発・製造支援を行う会社です。

1950年創業以来、高品質で施工面・コスト面まで考慮した商品をご提供し続けてきました。


自社製品の製造販売だけではなく、木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。

柏田木材・5つのお約束

● 加工・接着・着色・塗装を自社にて一貫対応いたします。

● ウレタン塗料だけではなく、UV塗料・オイル塗料・屋外用塗料など様々な塗料に対応いたします。

● お客様からの材料支給にも対応いたします。

● 加工前の材料保管・加工後の製品保管を自社倉庫にて行います。

● お客様のご要望に合わせて樹種・形状・塗装仕様のご提案をいたします。



“県産材・地域材”の活用

柏田木工所として創業して以来培った知識とネットワークを活かし、県産材や地域材の利用にも積極的に取り組んでいます。

以下のような地域材の活用実績がございますので、ぜひご相談ください。

  • 奈良県産杉
  • 奈良県産桧
  • 吉野杉
  • 吉野桧
  • 信州産唐松


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立地による“リーズナブルな価格”の実現

私たちが工場を構えるのは、奈良県五條市。

銘木として知られる吉野杉の産地とも近い、林業・製造業が盛んな地域です。

そのため、良質な木材を最低限の輸送コストで入手できるため、お客様にもコスパの高い木質内装建材をご提供できます。

倉庫管理による“施工効率性アップ”

羽目板材などは長尺な建材であるため、現場での置き場確保にお困りのケースは少なくありません。

早めに納品すれば、作業スペースに影響がでてしまうこともあるでしょう。

柏田木材では、材料の一時保管場所として、自動倉庫による管理を導入しています。

必要なものを必要なタイミングで現場へ納品できるため、施工効率性アップが期待できるだけではなく、工期遅延のリスクを防げます。


全工程を自社工場で行う“品質安定性”

木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行っているため、品質のばらつきや手作業による人工の増加、工程間での運搬による時間や費用のロスを最小限に抑えられます。

全工程を自社で管理しているため、高い品質安定性を保証できる点が私たちの誇りです。


高い塗装技術

柏田木材は、木質建材への加工だけではなく、各種不燃塗装やUV塗装も含めた特殊塗装も、全て自社で行なっています。

複数種の塗装サンプルの作成や、オリジナル着色のご提案など、豊富な塗装レパートリーを組み合わせ、お客様のイメージを実現化できる点が弊社の強みです。

また、バイオマスボイラーによる自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なオスモUV塗装の導入によるVOC削減など、環境へ配慮した技術も積極的に導入しています。



工期・予算・デザインに合わせた“材料選定のご提案”

柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。

そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで一貫したサポートをご提供。

「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。







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