“森林環境税”はいつから始まる?概要から使い道までわかりやすく解説
2024年から、「森林環境税」として国民一人につき1,000円が課税されることが決まりました。
貴重な資源である森林を守るための施策です。
しかし、まだまだその詳細や使い道について、あまり知らない方も多いでしょう。
そこで、今回は「森林環境税」について、詳しく解説します。
●「森林環境税」は、森林維持などの目的で、国民から均等に徴収される国税です。
●徴収された税収は、「森林環境贈与税」として、地方自治体へ分配され、森林保全や林業サポート、木材利用啓蒙などの目的で使われます。
●私たち「柏田木材工業」は、1950年に創業以来培った高い製造技術を活かし、日本の木材自給率を上げるべく、国産材・地産材を使った高品質の内装材製造や、開発サポートを行っています。
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森林環境税とは?法律制定の目的は?
「森林環境税」は、令和6(2024)年度から、住民票をもつ国民一人につき年額1,000円を市町村が賦課徴収する税金です。
これに先行して令和元(2019)年から始まっているのが、「森林環境譲与税」。
この2つは混同されがちですが、本質は全く異なります。
〈森林環境税〉
個人住民税均等割の枠組みを用いて、住民税と合わせて徴収される“国税”
〈森林環境譲与税〉
国民より徴収された「森林環境税」を、市町村・都道府県に対して、私有林人工林面積や林業就業者数・人口に基づき、按分して支給される“贈与税”
これらの制度ができた背景には、森林大国ならではの課題が関係します。
日本は、その国土の2/3程度を森林が占めており、そのうちの約40%は、人工林です。
しかし、林業従事者や高齢化が深刻化しており、所有者の分からない森林も増加しているのが現状です。
林野庁の調査によると、人口林の約2/3が所有者不明もしくは所有者高齢化によって管理が不十分になっている恐れがあることも分かっています。(参考:林野庁|森林経営管理法の概要と所有者不明森林への対応)
このままでは、大切な森林資源が衰退していく可能性は否めません。
森林が荒廃すると、以下のような問題が起こるリスクが高まります。
- 生育過程で多くの二酸化炭素を吸収する良好な木が育たない
- 丘陵地において、地滑りが起こりやすくなる
- 水源の涵養(かんよう)機能が落ち、水質が悪くなる
- 森林に生息する多様な動植物が減少する
- 林業・製材業の衰退や輸入木材への依存が増大する
森林整備等に必要な地方財源を安定的かつ継続的に確保し、これらの問題を食い止める目的で、令和元(2019)年に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立しました。
諸外国と日本の“環境税”に違いはある?
最も大きな違いは、諸外国の環境税額と比べて、日本の「森林環境税」は、段違いに安いという点。(参考:環境省|諸外国における炭素税等の導入状況)
CO2税や炭素税など名称は異なりますが、環境意識の高い欧州では、日本の10倍以上の税額が課せられている国は少なくありません。
税額以外にも大きな違いがあり、日本は森林運営へ直接充てられるのに対して、欧州などでは、年金や保険料、所得税・法人税の引下げなど、負担軽減のために使われます。
そのため、使用目的が限定され、納税者である国民に分かりやすい形で用途が周知されるのです。
森林環境税の使い道は?7つの用途
「森林環境税」は、「森林環境贈与税」として、公平に自治体を通して森林運営資金として分配される資金です。
国民一人一人から徴収されるため、その用途は誰もが簡単に確認できるように公表しなくてはいけないことが定められています。(参考:林野庁|森林環境譲与税に関する都道府県の使途の公表状況)
では、実際にどのような用途で使われているのでしょうか?
主な使い道をそれぞれ詳しく見てみましょう。
間伐の促進や費用確保
森林を“健康的”に保つために欠かせないのが「間伐」です。
適切な間伐(間引き)によって、樹木の成長が活発になり、丈夫な根が張り、地滑りや倒木などの災害を未然に防ぐことができます。
しかし、間伐にかかる人件費を林業だけで回収することは困難な上に、そもそも従事者が足りていないのが現状です。
そのため、森林環境贈与税を間伐のための人材確保や経費として使っている自治体が多く見られます。
その効果もあり、間伐等の森林整備が、制度の始まった令和元年度から令和3年度の間に、約5倍(約30.8千ha)まで拡大しており、森林の健全化が進展しています。(参考:林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税)
放置林・所有者不明林の整備
過疎化や少子高齢化、森林所有者の世代交代などが原因で、所有者不明な森林や、長年放置されている森林が増加しています。
所有者が分からなくなり、荒廃が進む山林が増えている。
国土交通省はこのほど、2050年までに新たに最大47万ヘクタールの森林が「所有者不明」になるとの推計をまとめた。
所有者や境界がはっきりしないと間伐や林道整備もままならないうえ、林業の集約も進まない。
航空写真と全地球測位システム(GPS)で境界を調べたり、間伐材を製品化したりと、自治体や森林組合が知恵を絞っている。
(引用:日本経済新聞|山林の荒廃どう防ぐ 2050年までに「所有者不明」47万ヘクタール)
また、所有者が分かっていても離れた場所にいて、整備が行き届いていない森林も。
平成30年に制定された森林経営管理法によって、放置されて手入れが行き届いていない森林を市町村が森林所有者から委託を受け、公的に管理できるようになりましたが、やはりそれには資金が必要です。
そこで、多くの森林を抱えている自治体においては、林道整備などの森林整備費用として森林環境贈与税を使っています。
水源涵養・森林に生息する多様生物の保護
近年、水不足や局地的な豪雨など、降水量差が問題視されている中、森林の持つ水源涵養機能が注目されています。
森林の水源かん養機能は、水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化といった機能からなり、雨水の川への流出量を平準化したり、あるいは、おいしい水を作り出すといった森林の働きです。
また、森林は、土砂の流出や崩壊を防止し、水供給等において大変重要な役割を担っているダムの堆砂を防ぐ働きもあります。
(引用:林野庁|水を育む森林のはなし)
〈水資源の貯留〉
豊かな森は、スポンジのように多量の水を抱え込むことができ、急激に川に流れ出ず、河川流量の安定が実現できます。
〈洪水の緩和〉
森林の土壌に浸透した雨水は、根の間を通り、ゆっくり川へ流れ出ます。
そのため、大雨の際に川の流量を低下させる働きがあります。
〈水質の浄化〉
森林土壌によって濾過された雨水には、土壌に含まれたミネラルが適度に溶け出し、“美味しい水”となって私たちの元まで届きます。
また、健やかな森林の下には豊かな生態系が生まれるため、これらの生息地を保全することも可能です。
水源が豊富な都道府県では、“きれいな水”を守る目的で森林環境贈与税が使われています。
二酸化炭素の“固定化”
森林の木々は、成長過程で多くの二酸化炭素を吸収します。
さらに、建築資材や紙などとして使われた後、再利用・再使用できるだけではなく、土に返して森の栄養分とすることもできます。
その過程で再び二酸化炭素を排出することがないため、二酸化炭素を固定できる期間が100年とも200年とも言われているのです。
温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を“プラスマイナスゼロ”に近づけるために、森林環境税が使われている事例は数多く見られます。
林業の人材育成・システム化・集約化
森林を維持するためには、やはり林業従事者の力が欠かせません。
しかし、従事者の減少は深刻で、昭和55年と比較すると約1/3にまで落ち込んでいます。
また、高齢化も顕著で、令和2年には25%にまで上昇し、全産業平均の15%と比べても明らかに高い水準です。
この現状を打破すべく、各自治体は林業の魅力発信や移住支援、現場技能者の育成・指導を進めています。
また、森林データのクラウド管理や、レーザー計測器の活用による労力削減、ICT(情報通信技術)の現場活用を進め、“スマート林業”の普及促進を行っている自治体も少なくありません。(引用:林野庁|森林資源情報のデジタル化/スマート林業の推進)
これらの取り組みによって、林業の新規就業者は徐々に増えており、若年者率(35歳未満の割合)を見ても、全産業が減少傾向にある中で、林業は上昇しています。
木材利用の啓蒙
森林環境贈与税の使い道は、林業に関わるものだけではありません。
住民への木育(もくいく)や、木材製品の贈呈、植樹イベントの実施、公共施設の木質化など、「木の魅力」を広めるための活動へも充てられています。(参考:林野庁|木育)
これらの活動が、国産材の利用促進、つまり木材自給率の上昇へつながり、結果的に林業・製材業の発展、ひいては日本の森林を守ることにつながることが期待されているのです。
森林環境税が“使われない”って本当?問題点は?
既に2019年から配分が開始されている「森林環境贈与税」。
毎年、総額200~500億円、市区町村単位の平均で1,953万円もの金額が自治体へと分配されています。(参考:令和3年度における森林環境譲与税の取組状況について)
“使われない”と言われる理由は、制度ができた当初、労働力が足らず、具体的な使い道を決定できずに、余ったお金は基金として積み立てている自治体が散見していたからです。
しかし、近年は基金への積立分が減っており、当初の目的である森林整備や人材育成、啓蒙活動に大半が使われています。
より効果的に「森林環境税」が活用されるためには、林業の活性化や人材確保が欠かせません。
そのために必要なのが、「木材自給率の向上」。
多くの木材を消費する建築業界が国産材を積極的に活用することで、林業・日本の森林は守られます。
建物の社会貢献性や存在意義を高めるためにも、ぜひ“国産材・地産材”を設計デザインに取り入れてみてください。
〈関連コラム〉
国産材利用でSDGs達成を目指す。メリット・デメリットから活用方法まで徹底解説
国産材を使って日本の森林を守りましょう
私たち「柏田木材工業株式会社」は、1950年に奈良県で木工所として創業して以来、多くの木製品の開発・製造支援を行ってきました。
木製製品のOEM・特注製造・研究開発を通じて、お客様の木材に関わるビジネス課題を解決いたします。
国産材利用にも積極的に取り組んでおり、以下のような地産材を用いた実績がございます。
- 奈良県産杉
- 奈良県産桧
- 信州産唐松
- 吉野杉
- 吉野桧
「国産材・地産材でこんな製品が作りたい」というご要望も“柏田木材”でしたら、実現できます。
その理由は、柏田木材工業がお客様へご提案する5つの“お約束”があるからです。
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●お客様からの材料支給にも対応いたします。
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木材に関するすべての工程を自社にて対応し、倉庫管理の代行によって運送距離や回数を減らすことで、運搬エネルギーの削減を実現できます。
また、自社工場は銘木として知られている「吉野杉・吉野桧」の産地と近いため、高品質な木材から作られた製品を最小限の運搬エネルギーでご提供できる点も強みです。
「バイオマスボイラー」による自然を無駄にしないクリーンな熱源確保や、水性塗料を用いた着色技術、高耐久で低汚染なUV塗装・オスモUV塗装の導入によるVOC削減など、様々なアプローチで環境に配慮。
総合的に高品質製品の製造と地球環境保護に取り組んでいます。
「木質系建材を使いたいが既製品では難しい」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、1950年創業以来“木工所”として培ってきたノウハウと環境開発でしっかりサポート。
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まとめ
「森林環境税」は国民全員から均等に徴収され、森林のある自治体へ「森林環境贈与税」として配分されます。
その使い道は、森林整備などの直接的な活動から、人材育成やシステム化、木材利用の啓蒙など間接的な活動まで様々です。
どれも最終目的は「健全な森林の保全」。
森林大国である日本の経済発展や、地球温暖化問題の解決策でもある二酸化炭素量削減につながる重要な取り組みです。
建物の社会貢献性や存在意義を高めるためにも、ぜひ“国産材・地産材”を設計デザインに取り入れてみてください。
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