学校はなぜ「内装制限を受けない」のか|建築基準報・消防法のルールと内装材選びのポイント

学校はなぜ「内装制限を受けない」のか|建築基準報・消防法のルールと内装材選びのポイント

不特定多数が利用する公共的な建物の多くは、建築基準法や消防法で定められる「内装制限」の対象です。

しかし、インターネットなどで調べると「学校は内装制限を受けない」という情報を見かけます。

そこで今回は、「内装制限」の基本的な知識と建築基準法・消防法におけるルール、「学校は内装制限を受けない」とされる理由、学校で内装制限を受けるケースについて、1950年創業の“柏田木材”が解説します。

最近話題の、学校の木造化・内装木質化や、内装材を選ぶ際のポイントも紹介しますので、ぜひ最後までごらんください。

※本記事で紹介する内容は概略です(2025年10月時点)。詳細は必ず行政所管などにご確認ください。

コラムのポイント

● 内装制限は火災時に建物から利用者が安全に避難するためのルールで、建築基準法・消防法によって定められています。

● 学校は建物用途として内装制限の対象外ですが、構造の種別や部屋の場所によっては天井・壁に防火材料の使用が義務付けられる可能性があるので注意が必要です。

● 2025年に改正建築基準法が施行され、大規模建築物における木造化・内装木質化のハードルは下がり、今後より一層“木”を取り入れた学校へのニーズが増えることが予想されます。

●「柏田木材」は1950年に奈良県で創業して以来、高品質な木質建材や技術開発支援に努め、国土交通大臣認定済みの「不燃パネル(不燃突板化粧板)と不燃木材」を製造販売しています。


内装制限とは|建築基準法・消防法のルール

内装制限とは|建築基準法・消防法のルール

「内装制限」とは、火災時に建物や建物の被害を最小限に抑え、中にいる人が安全に外へ避難できるようにするためのルールです。

具体的には、建築基準法第35条の2(特殊建築物などの内装)において、居室と避難経路(室内の廊下・階段)の天井・壁に防火材料※の使用を義務付けています。

※防火材料:防火(耐火)性が高い建築材料を指し、告示に明記されているか国土交通大臣による認定を受けていることが条件。「難燃<準不燃<不燃」の順で防火性能が高くなる。

▶︎関連コラム:不燃材料とは|建築基準法による決まりと防火性能、認定製品を選ぶポイント

建築基準法・消防法それぞれ内装制限に関するルールは基本的に同じで、主に以下の建物が対象です。

  • 特殊建築物※
  • 一定基準以上の規模(階数・延べ床面積)の建築物
  • 地下街
  • 火気使用室※
  • 無窓居室※

※特殊建築物:建築基準法第2条第1項第2号で定める公共性が高く周囲への火災・衛生面において周囲に与える影響が大きい建物(学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場、その他これらに類する用途に供する建築物)
※火気使用室:調理室、浴室や、その他の室で、かまど、コンロなどの火を使用する設備又は器具を設けたもの(主要構造部が耐火構造の場合を除く)
※無窓居室:床面積が50㎡を超える居室で開放できる窓やその他の開口部を有しない居室(天井の高さ6mを超えるものを除く)

ただし、建築基準法と消防法では、内装制限の目的や対象となる建物(範囲)、緩和条件に違いがあります。

法律目的
建築基準法火災の初期段階における安全避難(避難の誘導)確保
消防法火災の予防・初期消火・人命救助・本格消火

▶︎関連コラム:〈内装制限〉建築基準法を分かりやすく解説|建物種類・不燃材料・2025年建築法改正についても

▶︎関連コラム:消防法の「内装制限」|建築基準法との違いや緩和、天井・壁・家具デザインのポイント

学校はなぜ「内装制限を受けない」のか

学校はなぜ「内装制限を受けない」のか

内装制限に関する情報を調べると「学校は内装制限を受けない」と言う情報を見かけますが、「学校の大半部分は内装制限の対象から外れる」というのが正解です。

確かに、特殊建築物に含まれる建物のうち、以下の用途は内装制限の対象ではありません。

  • 学校
  • 幼稚園
  • 体育館
  • ボウリング場・スケート場など

加えて、2005(平成17)年まで建築基準法施工令第21条に「学校の教室でその床面積が50㎡を超える場合は、天井が3m以上でなければならない」というルールが明記されていました。

「避難経路が明確で天井が高いことにより煙が床まで降下する時間が長い」という法的な原則に基づき、学校が内装制限の対照から外されているのです。

ただし、学校の中でも内装制限の対象となる場合もあるので注意しましょう。



学校でも「内装制限を受ける」場合も

学校でも「内装制限を受ける」場所も

学校が以下条件のうちいずれかに該当する建物や範囲は、内装制限の対象になります。

  • 耐火建築物や「建築基準法第2条第9項の3(イ)に定める準耐火建築物(イ準耐)」※において、高さ31m以下で100㎡以内に防火区画された特殊建築物に該当する場合
  • 校舎内の地階
  • 校舎内の火気使用室(厨房や家庭科室、ボイラー室など)
  • 校舎内の無窓居室※およびその避難経路(廊下)

※建築基準法第2条第9項の3(イ)に定める準耐火建築物(イ準耐):主要構造部を準耐火構造としたものを指し、多くの木造建築全般はこれに該当する
※無窓居室:開口できる窓が少ないか全くない教室や図書室、特別教室(家庭科室、理科室・美術室・音楽室)および準備室、会議室、職員室など

ただし、建築基準法と消防法はどちらも内装制限に対する緩和措置を設けているため、それらの内容を事前に確認しておくことも重要です。

▶︎関連コラム:【内装制限の緩和】対象条件や住宅・店舗・オフィスの違い、消防法との関係性を解説


学校の「木造化・内装木質化」と内装制限の関係性

学校の木造・木質化と内装制限の関係性

2010(平成22)年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律※」をきっかけに、日本国内では国や自治体が管轄する公立学校を中心に、学校の木造化・内装の木質化が進んでいます。

※公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律:2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市の木造化促進法)」に改正され、木材利用促進の対象が公共建築物から建築物一般に拡大し、建物の木造化・内装木質化が民間プロジェクトにも普及している

木造校舎と聞くと古めかしいイメージですが、主要構造部を木造にしたり、床(フローリング)・壁・天井・造作家具・建具に木材や木質建材を使ったりする事例は増加しているのが現状です。

文部科学省は、2023(令和5)年度の公立学校施設新築・既存学校施設改修整備のプロジェクトについて、以下のようなデータを公表しています。

公立学校施設の新築・木材を使用した事例の割合は「70.3%(486/691棟)」
・木造事例の割合は「15.6%(108/691棟)」
・非木造で内装木質化した事例の割合は「54.7%(378/691棟)」
既存学校施設の改修整備・既存木造校舎の改修整備で「13,073㎥」の木材を使用(うち、76.5%が国産材)
・既存非木造校舎の改修整備で「23,740㎥」の木材を使用(うち、47.8%が国産材)
・該当する全プロジェクトで「36,813㎥」の木材を使用(うち、58.0%が国産材)

また、近年は教室と廊下・ホールの間仕切りを設けないオープンプラン※の学校が増えていて、教室(居室)と避難経路の境目が曖昧な事例が増えています。

※オープンプラン:空間を用途ごとに区切らず、多様的かつ開放的に利用できる学習環境で、教室とオープンスペースを連続させて一体的に構成するプランが一般的

学校のオープンプラン
(画像引用:文部科学省|これからの「学び」をささえる環境|目黒区立宮前小学校

これらの現状を踏まえて、2025年施行の改正建築基準法では、中大規模建築物における「部分的な木造化を促進する防火規定の合理化」に関する内容が改定されました。

改正前「耐火性能が要求される大規模建築物(延べ床面積が3,000㎡超)においては、壁・柱・梁など全ての構造部材を例外なく耐火構造※とする」
改正後「耐火性能が要求される大規模建築物(延べ床面積が3,000㎡超)においても、壁・床で防火上区画された範囲内であれば部分的な木造化・木質化を可能とする」

壁・柱・梁など木質構造部材を現し(あらわし)にできる可能性が高くなる
(関連法規:建築基準法第21条第2項、第2条第9号の2など)

※耐火構造:建設省告示第1399号で定める建物の主要構造部(耐力上重要な壁・柱・床・梁・屋根・階段)に、一定以上の耐火性能がある構造で、これまではRC造・SRC造が主流だったが、技術の進歩により木造も増えている

大規模建築物における木造化・内装木質化の例
(画像引用:国土交通省|改正建築基準法について

小学校・中学校・高等学校の設置基準では以下のように校舎の最低面積が定められており、校舎の延べ床面積が3,000㎡を超えるケースは珍しくありません。

学校の種類校舎の面積
小学校児童数1〜40人「500㎡」
児童数41〜480人「500+5×(児童数-40)」
児童数481人〜「2,700+3×(児童数-480)」
中学校生徒数1〜40人「600㎡」
生徒数41〜480人「600+6×(生徒数-40)」
生徒数481人〜「3,240+4×(生徒数-480)」
高等学校生徒数〜120人「1,200㎡」
生徒数121〜480人「1,200+6×(生徒数-120)」
生徒数481人〜「3,360+4×(生徒数-480)」
(参考:文部科学省|小学校設置基準文部科学省|中学校設置基準文部科学省|高等学校設置基準

そのため、学校施設の設計デザインにおいて内装制限による材料選定やプランニングの“ハードル”は低くなり、より一層木造化・内装木質化が進むと期待されています。


学校を木造・木質化するメリット

学校を木造・木質化するメリット

学校(校舎)を木造化・内装木質化するメリットは、以下の通りです。

  • 木の精油成分(香り)によるリラックス効果・疲労感の緩和・集中力アップ・血圧低下
  • 木の精油成分による免疫力アップや消臭・抗菌・ダニの防除効果
  • 木材の積極的利用による森林保護やCO2排出量削減
  • 木育※効果(国産材や地域材(地産材)による地方創生の重要性、地球環境の保全など)

※木育(もくいく):世代を問わずが木や森に触れながら、日本に古来から伝わる木材の良さや木の文化への理解を深める教育活動

林野庁では、建物の木造化・内装木質化を推進するために、複数の補助事業(補助金)を設けている点もポイントです。

▶︎関連コラム:【学校の木造化・木質化】メリット・デメリットと設計デザインのコツを解説


学校の内装材を選ぶときのポイント

学校の内装材を選ぶときのポイント

学校の設計デザインにおいて、内装材を選ぶ際にはコストや見た目以外のポイントもチェックしましょう。

デザインの調和性

空間全体のデザイン調和性を重視する場合は、内装制限の対象となる部分とそうでない部分(非不燃・不燃)を同素材で仕上げられる内装材がおすすめです。

例えば、木をメインとしたデザインの場合、内装制限の対象となる天井や壁と、それ以外の床や造作家具、ドアの木目・色合いを揃えられると、統一感のある内装に仕上がります。

柏田木材では、不燃・非不燃も突板貼り化粧板や、無垢材・不燃木材・集成材と幅広い製品を取り扱っておりますので、木材を使ったトータルデザインが可能です。

快適性

内装の仕上がりによって、空間の快適性が変わります。

木質建材は、以下の点において空間快適性を高めることが可能です。

  • 調湿性能による不快感軽減
  • 紫外線吸収性能によるグレア※の軽減
  • 吸音性能による耳への負担軽減

木材(特に無垢材・不燃木材)は、細胞レベルの小さい空隙を多く持ち、そこに空気中の水分(湿気)を抱え込み、乾燥時には放出する調湿性能があります。

また、木材は紫外線を多く吸収し、無数の空隙に含まれる空気によって音の伝わりを遮る効果も認められています。

※グレア:目の不快感や見えにくさをもたらす「まぶしさ」

経年変化

内装材は外装材と比べると紫外線や雨の影響がなく、経年劣化が現れにくいですが、それでも窓際では窓からの日差しを受け、それ以外の場所でも照明光に含まれる紫外線によって日焼けします。

そのため、学校の内装材を選ぶ際には、変色の具合なども事前に確認しましょう。

無垢材や突板化粧板などの木質内装材は、樹種によって濃色化・淡色化します。

また、ウレタン塗装を施した建材は塗料の種類によって段々と黄変(黄ばみ)が起こります。

柏田木材では、無黄変タイプのウレタン塗料を標準仕様とし、木材の日焼けによる変色を防ぐ塗装もお選びいただけます。

耐久性

学校は児童が元気よく長時間過ごす場所です。

そのため、内装材を選ぶ際には耐久性を確認しましょう。

物がぶつかりやすい壁仕上げ材や家具の材料に木質建材を使用する場合は、表面の耐摩耗性を高めるUV塗装品がおすすめです。

※UV塗料は加熱時に高温になるため、UV塗装品は防火材料として認められません。ご注意ください。

柏田木材は、ウレタン塗装やオイル塗装だけではなく、大掛かりな設備を要するUV塗装を含む特殊塗装も、全て自社工場・自社スタッフによって行い、高品質な製品を提供しております。

安全性

学校は、衝突・転倒などの事故に対する安全対策が特に必要な建物です。

床材を選ぶ際には滑りにくく衝撃緩和性のある製品を選びましょう。

手を触れる壁や家具には、抗菌・抗ウイルス塗装品がおすすめです。

木質フローリングは、木材に含まれる無数の空隙により、衝撃を緩和する効果があります。

柏田木材では、オプションでフローリングに「滑り止め防止塗装」、化粧板に「抗菌抗ウイルス塗装※」をご選定いただけます。

※SIAA(抗菌製品技術協議会)認定の塗料を用いても、製品が認定を受けるためには塗装済み製品として審査を受ける必要があります。ご注意ください。


内装制限に対応可能な “柏田木材”の木質建材

【不燃材料認定取得済み】レパートリー豊富な “柏田木材”の木質建材

柏田木材は、「不燃パネル不燃木材・無垢材・突板化粧板」を取り扱う建材メーカーです。

弊社製品のうち「不燃パネルと不燃木材」は、全て国土交通大臣認定品(不燃材料)として認定番号を取得しています。

林業・製材業で世界的に有名な奈良県五條市で1950年創業以来培った知識・経験・ネットワークを活かし、お客様のご要望やプラン・現場の条件に合う高品質な木質建材を提案いたしますので、「内外装の防火規定に対応できる・表面耐久性が高い・変色しにくい・環境と人にやさしい・産地にこだわった」木質建材をお探しの方は、ぜひ弊社へご相談ください。

柏田木材・製品の特長

● レパートリー豊富な「塗装・表面加工ラインナップ」
● 木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行うことによる「高い品質安定性の確保」
● 木材産地に近い立地による「リーズナブルな価格の実現」
● SDGsやカーボンニュートラル実現に貢献できる「国産材(県産材・地域材)の活用」
● “こだわり”を実現できる「特注加工・開発支援・OEM製造」
● 施工効率を高められる「自動倉庫管理のオンタイム納品」


突板化粧板(不燃パネル)

天然木突板貼り不燃パネル

対応樹種:杉・桧・米栂・米松・オーク・バーチ・メープル・ウォルナット・チーク・チェリー・アッシュ・カリン・カバなど40樹種以上

規格サイズ

厚み(mm)6・9
幅(mm)450
長さ(mm)1818・2424
塗装ウレタン塗装
※数量によってはその他仕様のご注文も承っております。

特注サイズ

厚み(mm)3〜90
幅(mm)〜1,220
長さ(mm)〜2424
塗装ウレタン塗装
※数量によってはその他仕様のご注文も承っております。

▶︎おすすめコラム:化粧不燃ボードとは|種類・厚み・規格・価格から、準不燃材との違いまで徹底解説

ポイント

突板化粧板は、不燃タイプに加えてUV塗装も対応可能な非不燃タイプもございます。

防火規定の対象部分とそうでない部分のデザインを統一したい方は、ぜひ弊社製品の採用をご検討ください。


ルーバー材

ルーバーUV塗装
ルーバー(UV塗装材)

対応樹種(化粧貼り):杉・桧・オーク・バーチ・メープル・ウォルナットなど
対応樹種(不燃木材):杉・桧

不燃化粧貼り仕様

厚み(mm)20〜90
幅(mm)45〜450
長さ(mm)1500〜4000
塗装・無塗装
・ウレタン塗装
・UV塗装
・オイル塗装
・屋外用塗装 など
※数量によってはその他仕様のご注文も承っております。

不燃木材仕様

厚み(mm)20〜90
幅(mm)〜450
長さ(mm)1500〜
塗装・不燃ウレタン塗装
タイプ・レギュラータイプ
・白華抑制タイプ
※数量によってはその他仕様のご注文も承っております。


不燃木材(羽目板)

不燃木材
不燃木材

対応樹種:杉・桧

厚み(mm)12~90
幅(mm)~450
長さ(mm)1500〜
塗装・不燃ウレタン塗装(白華抑制タイプ)
※数量によってはその他仕様のご注文も承っております。

▶︎おすすめコラム:【不燃木材】メリット・デメリットや建築基準法との関係について解説

▶︎おすすめコラム:木材は塗装で“不燃化”できる?建築基準法との関係や塗料の種類を解説


まとめ

内装制限は火災時の建物から利用者が安全に避難するためのルールで、建築基準法・消防法によって定められています。

学校は建物用途として内装制限の対象外ですが、構造の種別や部屋の場所によっては天井・壁に防火材料の使用が義務付けられる可能性があるので注意が必要です。

2025年には改正建築基準法が施行され、大規模建築物における木造化・内装木質化のハードルが下がり、今後一層“木”を取り入れた学校へのニーズが増えることが予想されます。

柏田木材は1950年創業以来、地の良質な木材を取り扱い、無垢材・不燃木材、不燃・非不燃突板合板を製造しております。

「木目を活かした内外装デザインを実現させたい」「統一性のあるウッドデザインを取り入れたい」という方は、ぜひ柏田木材までご相談ください。

お問い合わせに関して

当社では主にメーカー様、商社様、施工業者様、設計事務所様からのお問い合わせを承っております。
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