【木材の劣化】種類と原因、防止・対策方法を解説|長持ちする建築木材についても

木材は経年とともにいくつかの劣化症状が現れます。
そのため、クライアントからのクレームを未然に防ぐためには、劣化の種類や対策を知っておくことが重要です。
そこで、今回は「木材の劣化」について、その種類と原因から防止方法、耐久性の高い建築木材を選ぶ際のチェックポイントまで“木材のプロ”が詳しく解説します。
おすすめの建築材料も紹介しますので、設計デザインの材料を検討している方はぜひ最後までごらんください。
● 木材はいつか必ず劣化しますが、その速度を遅らせることによって耐久性と美観を長期間維持できます。
● 木材の劣化を遅らせるためには、施工後の点検や維持管理に加えて、新築時の材料選定も重要です。
●「柏田木材」は1950年に奈良県で創業して以来、高品質な木質建材や技術開発支援に努め、「突板化粧板(不燃・非不燃)・LVS・ランバーコア・無垢材・不燃木材」を取り扱っています。
コンテンツ
国立競技場の木材劣化は欠陥なのか

2019年に竣工し約6年が経過した「国立競技場」ですが、一部の木材に腐朽やカビが発生したとニュースで取り上げられています。
「設計ミスや施工不良なのでは」という議論が持ち上がり、その耐久性についてSNSを中心に疑問視する意見が多く見られました。
しかし、木材はその性質上、腐朽やカビ、シロアリ被害などの劣化を避けて通れません。
そのため、重要になるのはそれらの劣化を如何にして遅らせられるかという点です。
実際に、日本最古の木造建築物として知られる607年建立の法隆寺は、これまで幾度となく改修や修繕を重ねています。
日本近代において大規模木造建築が施工され始めたのは2000年以降の話であり、現時点ではそのメンテナンス方法はいわば“実験段階”と言っても過言ではありません。
ただし、木材の劣化原因や種類とその対策を知ることで、確実に建物寿命を伸ばすことが可能です。
木材の劣化とは|種類と原因、変化

木材の劣化が進むと、強度や耐久性、美観が低下するなどの問題が発生し、当初の目的では使用できなくなります。
木材の劣化といってもその原因はいくつかあり、症状や建物に与える影響が異なるので、それぞれの特徴を紹介します。
生物的劣化
生物的劣化とは、菌類を含む生物によってもたらされる劣化現象を指し、木材の場合は以下の3つが該当します。
木材腐朽菌による腐朽
土壌などに生息する木材腐朽菌によってセルロースなどの細胞構成成分が分解されて軟弱化します。
木材腐朽菌の種類によって褐色腐朽・白色腐朽・軟腐朽に分類されますが、どれも木材の強度低下や崩壊を招く恐れがあるため、深刻な問題です。
シロアリによる蟻害(ぎがい)
多数のシロアリの中でもイエシロアリ・ヤマトシロアリ・アメリカカンザイシロアリが主な木材加害種です。
一般に含水率が20%以上の木材を食べて強度を低下させます。
カビによる色素定着
カビ菌は木材の表面に繁殖する表面汚染菌で、木材腐朽菌やシロアリと異なり強度や耐久性には影響しないが、美観を損ねたり人の健康被害をもたらす可能性があります。
▶︎おすすめコラム:【木材腐朽菌の繁殖条件と対策】カビ・菌根菌・シロアリとの違いや材料選びのコツを解説
▶︎おすすめコラム:【木材のカビ】種類と見分け方、放置する危険性、カビ取り・防止方法を徹底解説
化学的劣化(気象劣化)
化学的劣化とは、温度や湿度、紫外線などの影響によって変質や変色を起こす現象を指します。
気温変動による風化
気温が急激に上昇・下降すると、木材に含まれる水分が凍結・解凍を繰り返し、細かいひび割れが生じます。
紫外線による風化
木材が紫外線を受けると光酸化作用が促進され、表面が風化して褪色化や灰白色(銀白色)化につながります。
雨水・高湿度による風化
木材の含水率が変動し、反り・ねじれ・伸縮・割れなどの変形が起こり、さらに細胞成分であるセルロースが加水分解されて木材の強度や耐久性が低下します。
熱と空気による酸化
高温で木材を乾燥させたり、焼いたりすると、木材中の成分が熱分解され、酸化酵素によって反応が起こり、変色する可能性があります。
木材劣化の防止・対策方法

木材の劣化を防止するためには、施工後のメンテナンスに加えて材料選定においても押さえていただきたいポイントがあります。
施工後の定期点検
劣化のスピードを遅らせるためには、早めに変化を発見し、適宜メンテナンスする必要があります。
日常点検
建物管理者が木部を日常業務の中で目視によって点検し、異常を発見した場合は直ちに臨時の詳細点検を実施します。
通常点検
建物管理者が木部をあらかじめ設定したスケジュールに沿って目視にて定期点検し、異常を発見した場合は直ちに臨時の詳細点検を実施します。
定期点検
1〜2年に一度、建物管理者と施工者の両方が立ち会い維持管理計画に沿って詳細点検します。
臨時点検
地震・台風・火災などの災害が発生した直後や、日常点検・通常点検で異常を発見した場合に適宜点検を実施します。
(参考:林野庁|外構部の木質化 実証事例集)
木部は劣化すると腐朽・シロアリ・カビの影響を受けやすくなるため、これら点検で早めに異変に対処できる体制を整えておく必要があります。
湿度管理
木材の天敵である木材腐朽菌・シロアリ・カビ菌は、どれも全て増殖するために「水分・適切な温度環境・養分・酸素」が必要です。
しかし、施工後の木質成分と温度、酸素、養分を取り除くことはできません。
そのため、唯一コントロールしやすい湿度を徹底管理することで、劣化を大幅に抑えられます。
木部をできるだけ濡らさず(湿らせず)含水率を30%以下に維持すると、木材腐朽菌・シロアリ・カビ菌はほとんど繁殖しません。
逆に高い含水率の木材や、長期間高湿度に晒された木材は、木材腐朽菌・シロアリ・カビ菌が繁殖しやすくなるため注意しましょう。
処理済み木材の選定
防腐・防虫薬剤が木材の深部まで注入(含浸)された処理済み木材を選定しましょう。
通常の木材よりも価格は高めですが、メンテナンス費用を抑えるためには初期コストをかける方法が近道です。
現場塗装によって薬剤を木材表面に塗布する選択肢もありますが、防腐・防虫剤が深くまで浸透しないため効果が短く、こまめな再塗装が必要になる点には注意しましょう。
防腐・防虫薬剤を注入した木材でも、雨の当たる場所に施工すると徐々に水分と一緒に薬剤が流出してしまう可能性があります。
そのため、劣化を防ぎ長期間意匠性や耐久性を維持したい場合は、防腐・防虫処理済木材をさらに塗装コーティングした材料がおすすめです。
「柏田木材」は、無垢材・不燃木材への特殊塗装も全て自社工場・自社スタッフにて行なっておりますので、高耐久な木材をお求めの方はお気軽に弊社までご相談ください。
劣化しにくい部位の木材選定
同じ樹種・産地の木材でも、切り出した部位によって耐久性が異なります。
赤身(赤太)
赤みがかった丸太の中心部分を指し、心材(芯材)とも呼ばれます。
白身より含水率が低く硬くて重く変形しにくい上に、抗菌・防虫成分が多く含まれていて腐りにくくカビにくいため、高価で取引されるのが通常です。
主にウッドデッキや外壁材などの屋外に用いられます。
白身(白太)
白みがかった丸太の樹皮に近い部分を指し、辺材とも呼ばれます。
赤身より含水率が高く柔らかくて軽いため変形しやすい点には注意が必要です。
また、抗菌・防虫成分も少ないため、薬剤注入などの処理が欠かせません。
ただし、赤身よりも節が少なく安価なため、水分による影響を受けにくい室内に広く用いられています。

耐久性に優れた赤身ですが、「色合いが気になる・イメージと合わない」という場合は、塗装で白身の色合いに近づけることも可能です。
「柏田木材」は、塗装におけるオリジナルカラーの調色や艶の調整も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
表面保護塗装
雨などの水分や紫外線、ホコリなど、化学的劣化(気象劣化)の原因から木材を守るために有効な方法が「表面保護塗装」です。
紫外線ブロック
着色塗料は、顔料に紫外線吸収剤が配合されているため、木材に到達する紫外線を軽減できて劣化や風化の速度を遅らせられます。
防水
樹脂系の造膜系塗料は、木材表面に塗膜が形成されて水の浸入や木材成分の流出を防止できます。
また、アクリル樹脂・ウレタン樹脂・アルキド樹脂・シリコン樹脂などが配合されている塗料は、耐水性や撥水性が高まる点もポイントです。
抗菌・防カビ
抗菌・防カビ剤入り塗料は、木材腐朽菌やカビ菌の繁殖を抑制できます。
このように表面保護塗装によって木材の劣化を遅らせられますが、防蟻にはあまり効果がない点には注意しましょう。
表面保護のために用いられる塗料は、主に「造膜系・半造膜系・浸透(含浸)系」に分かれ、それぞれ特徴は異なります。
(評価基準) | 造膜系 | 半造膜系 | 浸透(含浸)系 |
---|---|---|---|
特徴 | ・表面に塗膜が形成される ・表面保護能力が高い | ・表面に薄い塗膜が形成される ・表面保護能力は中グレード | ・表面に塗膜は形成されない ・表面保護能力は低い |
見た目 質感 | ・質感が人工的になる | ・造膜系よりは質感がナチュラル | ・質感がナチュラルで無垢材に近い |
吸放湿性 | ・低い | ・中グレード | ・高い |
耐候性 耐水性 | ・高い ・塗膜のヒビや剥離があると、水が侵入し、一気に性能が低下する | ・中グレード | ・中グレード ・降雨によって顔料が流出し、撥水性が低下すると性能が低下する |
メンテナンス性 | ・再塗装の際にケレン処理※が必要 | ・塗膜がしっかりと残っている場合はケレン処理が必要 | ・そのまま再塗装できる ・再塗装すると塗料の浸透量が増加するため、耐候性が高まる |
再塗装の周期 | 透明:1〜2年周期 着色:3〜5年周期 | 透明:1〜2年周期 着色:3〜5年周期 | 透明:半年〜1年周期 半透明:2〜3年周期(2回目以降は4〜5年周期) |
※ケレン処理:塗装前に残っている塗膜表面を研磨して新たな塗料がしっかりと付着するようにするための下処理
柏田木材は、現場塗装では叶わない高い表面保護効果を発揮する最新塗料を各種取り扱っております。
表面保護効果が高い「UV塗装」や超高耐久な「レナー社・屋外用水性塗料」、撥水性・潤滑性が高くナチュラルに仕上がる「木材保護塗料S-100」など、豊富な機能性塗料をご指定いただけますので、高耐久な木材・木質建材の選定は弊社にお任せください。
▶︎おすすめコラム:木材の仕上げ加工|塗装・研磨方法の種類やDIYとプロの違いを徹底解説
▶︎おすすめコラム:【木材】現場塗装・工場塗装はどちらがいい?それぞれのメリット・デメリットと最新塗料を解説
無垢材・突板化粧板どちらも“柏田木材”へご相談ください

柏田木材は、無垢材・不燃木材・突板化粧板・不燃パネルを扱っているからこそ、お客様のご要望やプラン・現場の条件に最適な材料を提案できます。
木質建材の加工・製造に加えて特殊塗装も全て自社工場で手掛けているため、「内装制限に対応できる・表面耐久性が高い・変色しにくい・環境と人にやさしい・産地にこだわった」木質建材をお探しの方は、ぜひ弊社へご相談ください。
● レパートリー豊富な「塗装・表面加工ラインナップ」
● 木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行うことによる「高い品質安定性の確保」
● 木材産地に近い立地による「リーズナブルな価格の実現」
● SDGsやカーボンニュートラル実現に貢献できる「国産材(県産材・地域材)の活用」
● “こだわり”を実現できる「特注加工・開発支援・OEM製造」
● 施工効率を高められる「自動倉庫管理のオンタイム納品」
突板化粧板(非不燃・不燃)

対応樹種:杉・桧・米栂・米松・オーク・バーチ・メープル・ウォルナット・チーク・チェリー・アッシュ・カリン・カバなど40樹種以上
【不燃タイプ】
種類 | 厚みmm | 幅mm | 長さmm | 塗装 |
---|---|---|---|---|
規格サイズ | 6・9 | 450 | 1818・2424 | ウレタン塗装 |
特注サイズ | 3〜90 | 〜1,220 | 〜2424 |
【非不燃タイプ】
種類 | 厚みmm | 幅mm | 長さmm | 塗装 |
---|---|---|---|---|
規格サイズ | 6・9 | 450 | 1818・2424 | UV塗装 ウレタン塗装 無塗装 |
特注サイズ | 3〜90 | 〜1,220 (UV塗装品は60〜450) | 〜4000 (UV塗装品は1500〜4000) |
無垢材(羽目板)

対応樹種:杉・桧・唐松
樹種 | 厚みmm | 幅mm | 長さmm | 塗装 |
---|---|---|---|---|
杉・桧 | 10〜18mm | 70〜180mm | 1,500〜4,100 | 無塗装 ウレタン塗装 オイル塗装 UV塗装 オスモUVオイル塗装 |
唐松 | 要相談 | 要相談 | 要相談 |
不燃木材

対応樹種:杉・桧
種類 | 厚みmm | 幅mm | 長さmm | 塗装 |
---|---|---|---|---|
羽目板 ルーバー | 12~90 | ~450 | 1500~ | 無塗装 不燃ウレタン塗装(白華抑制タイプ) |
まとめ
木材はいつか必ず劣化するものです。
しかし、その劣化速度を遅らせると、メンテナンスコストを抑えて建物寿命を伸ばすことが可能です。
そのためには、施工後の維持管理に加えて新築時の材料選定も重要になります。
柏田木材は1950年創業以来、時代と共に様々な木質建材の製造・販売を行ってまいりました。
無垢材から不燃木材、不燃・非不燃突板合板まで多彩な製品を取り扱っていますので、木質材料の選定についてぜひご相談ください。