【屋外の木材防腐処理】塗料・方法の種類、現場処理と工場処理の違いを解説
ウッドデッキや外壁の板張り仕上げを採用する建物は多いですが、そこで重要なキーワードとなるのが「木材防腐処理」です。
しかし、最近著名な木材を使った建築物が腐食やカビで劣化したというニュースも耳にします。
「屋外に木材を使った建物の設計を検討している」という方で経年変化が心配な方も少なくないでしょう。
そこで今回は、木材が腐朽(腐食)する原因から防腐剤・処理方法の種類について詳しく解説します。
DIYや現場と工場で防腐処理するメリット・デメリットや違いも紹介しますので、木を使う設計デザインで材料を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
● 木材の耐久性と美観を維持するためには「防腐処理」が欠かせません。
● 使用する防腐剤や処理方法によって耐用年数が異なるので注意しましょう。
● 長期間防腐効果を維持したい場合には、工場で加圧注入・保護塗装された木材がおすすめです。
● 「柏田木材」は1950年に奈良県で創業して以来、高品質な木質建材をお客様に提供しております。
コンテンツ
木材が腐朽する原因
木材は木材腐朽菌が木の組織に含まれるリグニンやセルロース、セミセルロースを分解すると脆くなり劣化します。
木材は腐朽によって、「変色・断面欠損・軟化・へこみ・きのこの発生・振動の発生」などを引き起こすことから、建物の性能に最も影響を与える経年変化と言っても過言ではありません。(参考:国土交通省|施設の性能に影響を与える木材の経年変化)
厄介な点は、木材腐朽菌は土壌に生息してどんなに気をつけていても空気中を漂い滅菌できない点です。
木材腐朽菌は主に「白色腐朽菌・褐色腐朽菌・軟腐朽菌」の3種類に分けられ、樹種や環境によって繁殖する菌が異なります。
※木材腐朽菌については「【木材腐朽菌の繁殖条件と対策】カビ・菌根菌・シロアリとの違いや材料選びのコツを解説」でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
自然界では木が腐って土に還ることで土壌の栄養価が高まり植物の成長を促すため、森林サイクルにおいては重要な役割を担いますが、建築物にとって木材の腐朽は耐久性を低下させる“大敵”です。
木材に木材腐朽菌が繁殖する原因は4点あります。
原因 | 繁殖条件 |
---|---|
栄養分がある | 木には、栄養分となるリグニン・セルロース・ヘミセルロースなどの物質が多く含まれており、特に辺材(※)を好みます。 |
温度が繁殖に適している | 腐朽菌は20〜30℃程度の温度で最も活性化し、3℃以下ではほとんど活動せず40℃以下で死滅するとされています。 |
湿度(水分)が繁殖に適している | 腐朽菌は木材の含水率(※)が雨など周囲の湿気によって20%を超えると活性化し、逆に乾燥すると繁殖リスクが低下します。 |
繁殖に必要な酸素がある | 木材の主な腐朽原因である白色腐朽菌と褐色腐朽菌は好気性菌(※)であるため、発生・生育・繁殖するために酸素を必要とし、水中・土中では死滅します。 |
※辺材(へんざい):樹皮に近い部分を指し、逆に丸太の中央に近い部分は心材(しんざい)と呼ぶ。
※含水率(がんすいりつ):木材に含まれる水分の割合で、建築資材として使われる木材の含水率は15%以下が基準。
※好気性菌(こうきせいきん):酸素を吸い込みながら栄養を分解する種類の菌で、無酸素状態では生育できない。逆に、成長過程で酸素を必要としない菌は嫌気性菌(けんきせいきん)と呼ぶ。
木材腐朽菌の繁殖には「栄養・温かい温度環境・適度な湿気・酸素」が必要です。
つまり、このどれかを遮断すれば木材を防腐できます。
木材防腐処理のメリットと必要性
木材を腐朽菌の繁殖から守る防腐処理は、建物の耐久性や美観を維持するために欠かせません。
では、具体的に木材を防腐処理するメリットを紹介します。
耐久性・形状を長持ちさせられる
木材は腐朽すると組織が脆くなり耐久性は著しく低下します。
しかし、正しい防腐処理を施すことで長期間雨にさらされる屋外においても、未処理の木材と比べると耐久性・形状を維持できます。
耐久性・形状を長持ちできると、やりかえにかかるコストや手間を削減できる点もポイントです。
シロアリの繁殖を防げる
シロアリは腐朽して柔らかくなった木を好んで食べます。
つまり、防腐処理が施されたまだ硬い木にはシロアリが発生しにくいということです。
また、シロアリと木材腐朽菌の発生状況には共通点が多い点もポイントです。
原因 | 繁殖条件 |
---|---|
栄養分 | シロアリは腐った木材に含まれるセルロースやヘミセルロースなどの成分を分解して栄養分とします。 |
温度 | シロアリは6℃以上になると活動を始め、12〜35℃で繁殖が活発になります。 |
湿度(水分) | シロアリは空気中の湿度が70~80%程度を最も好みます。 |
酸素 | シロアリの生息・繁殖には酸素が必要です。 |
そのため、木材を腐朽菌から守ることはシロアリ対策に直結します。
木材の品質・性能が安定する
天然木材は、産地や保管環境、部位によって含水率や強度にばらつきがあります。
また、市場に流通している木材は辺材と心材が混在しているケースも珍しくありません。
しかし、それらの天然木材を一度工場などで防腐処理することで、品質や性能のムラを軽減できます。
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柏田木材はじっくり乾燥され深部まで防腐処理された木材を使い、高品質な木質建材を製造しております。
屋外への施工に適した特殊塗装やオーダー塗装も全て自社工場にて対応しているため、お客様のご要望に合う製品を提供できる点が“強み”です。
木材防腐処理の方法と塗料の種類
木材の防腐処理と言っても、使用する薬剤や処理方法によって特徴は異なります。
薬剤・処理方法の違いにより耐用年数にも違いがありますので注意しましょう。
防腐薬剤の種類
油状防腐剤
- 【クレオソート油】
コールタールを蒸留して作られる油分とナフタリンやフェノールなどの化合物を混ぜ合わせた薬剤で、主に鉄道の枕木などに使用されます。 - 【ナフテン酸金属塩】
石油に含まれるナフテン酸に銅が結合したものを有機溶剤に溶かして防腐剤として使用します。木材に加圧注入しても見た目がほとんど変わりません。
水溶性防腐剤
- 【CCA】
クロムと銅、ヒ素化合物から作られる防腐剤で、これまで最も多く使用されてきました。ただし、防腐効果が強くシロアリも寄せ付けない反面、ヒ素化合物を含むことから環境や人体へ悪影響を及ぼす可能性があることから、最近はあまり使われません。 - 【AAC・ACQ】
CCAの代わりに使用され始めたのがAAC(アルキルアンモニウム化合物)やACQ(AACに銅化合物を加えたもの)です。環境や人体への影響が少なく、処理後も木材の見た目はほとんど変わりません。 - 【CUAZ】
銅やホウ酸、アゾールを含む薬剤で、処理後はどうによって薄緑色になることから、仕上げ用木材ではなく土台など高い防腐効果を必要とする構造材に用いられます。
処理方法の種類
防腐処理の方法は、主に「薬剤塗装」と「薬剤含浸」、「加圧注入」の3つに分かれ、それぞれ現場でできる処理と工場でしかできない処理があります。
薬剤塗装
現場で木材に直接防腐剤を塗布する方法で、一部の薬剤はDIYによる作業も可能です。
最もコストが安いですが、防腐効果やその持続性はあまり高くありません。
薬剤含浸
木材を薬剤に浸す方法で、現場で短時間漬け込む方法と工場で長時間漬け込む方法があります。
木材の表面だけではなくある程度内部まで薬剤が浸透するため塗装よりも効果は高いですが、ベイツガなど柔らかく腐朽に弱い樹種では十分な耐久性を維持できません。
湿式加圧注入
薬剤の中に木材を入れて、真空と加圧を繰り返しながら深部まで薬剤を浸透させる方法で、防腐効果が高く長期間それを持続できます。
ただし水溶性の薬剤を使用するため、屋外では徐々に雨で薬剤が溶け出して効果が低下するので注意しましょう。
乾式加圧注入(AZN処理)
アゾールやネオニコチノイド化合物を含む薬剤を用いる方法で、水を一切使用しないため処理した木材の変形を抑えられます。
また、低汚染で環境にも人にも優しく、水溶性ではないので雨などで薬剤が溶け出すこともありません。
加圧注入は現場での作業はできず、材料の段階で工場にて処理されます。
雨が当たりやすく人の目にもつきやすい場所には、木の風合いを残したまま防腐でき、雨が降っても薬剤が溶け出さない「AZN処理」がおすすめです。
無垢材や合板だけではなく、集成材・CLT・LVLなど広く用いられており、屋外でも最も長期間防腐効果を持続できます。
DIY・現場と工場での木材防腐処理|値段・耐用年数・効果の違い
DIYや現場で防腐処理された木材と、工場で防腐処理された木材とでは、値段や耐用年数(寿命)や防腐効果に違いがあります。
それぞれメリットとデメリットがありますので、現場に合わせて適切な建材を選びましょう。
DIY・現場で防腐処理された木材
値段・価格 | コストは安いが、使える塗料が限られる(防腐効果が高く有毒性のある薬剤はDIYで使えない) |
耐用年数 | 木材の中央部まで浸透しないため、耐用年数は短い(市販の薬剤や3〜4年程度、業務用でも5年程度) |
メンテナンス | 定期的な防腐薬剤の再塗装が必要 |
DIYや現場での防腐処理は手軽な反面、効果は低めです。
また耐用年数が短く、定期的な再塗装を怠ると表面から腐朽が始まるため注意が必要です。
工場で防腐処理された木材
値段・価格 | 現場塗装よりコストは高いが、効果の高い加圧注入が可能 |
耐用年数 | 有機化合物系防腐剤は5〜8年程度、クレオソート油とナフテン酸銅系薬剤は10年程度、加圧注入処理材は10年以上もの間、防腐効果が持続する |
メンテナンス | 定期的なメンテナンスは表面保護塗装のみ |
工場で防腐処理された木材は初期コストはかかるものの、耐用年数が長く材料のやりかえや防腐薬剤の再塗装が必要ないため、トータルコストを抑えられます。
また、工場処理材は長期間大掛かりなメンテナンスが必要ないことから、細かい手入れが行き届きにくい公共的な建物や大規模建築物におすすめです。
柏田木材では、外装材に適した防腐処理済み羽目板材などの製造販売だけではなく、樹種や産地、サイズ、塗装仕上げを指定できるOEM製品や特注製品のオーダーも承っております。
「既製品ではイメージに合う材料が見つからない」「施工効率を高められる材料を探している」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
木材の紫外線・シロアリ・カビ対策も重要
屋外の施工に用いる木材は、腐朽だけではなく紫外線による劣化やシロアリ・カビによる影響にも対策が必要です。
原因 | 影響 |
---|---|
紫外線 | ・組織成分が分解されて、変色や痩せなどによって表面が風化する ・塗料の着色成分が分解されて保護効果が低下して褪色する |
シロアリ | ・組織成分を食べられると、強度が極端に低下する |
カビ | ・美観を損ねる ・木材の細胞壁にカビ菌が侵入すると、組織を分解して強度が低下する ・カビによって木材に湿気が留まりやすくなり、木材腐朽菌の繁殖を促す |
防腐剤の中にはシロアリ(蟻害・食害)に対しても一定の防止効果を得られるものもありますが、やはり表面に塗布する方法では効果はあまり長くありません。
過酷な環境下である屋外に木材を使用する場合は、加圧注入による防腐・防虫・カビ対策と、工場塗装によるムラのない高品質な表面保護が重要です。
柏田木材では、紫外線・雨・汚染・塩分・氷・高温に強い耐性のある屋外に特化した塗料を使用している数少ないメーカーです。
屋外用木材は“柏田木材”へご相談ください
柏田木材は、吉野杉や吉野桧の産地として知られている奈良県で1950年に創業して以来、良質な原木を仕入れて様々な建築木材へ加工販売する木質建材メーカーです。
これまで培った知識とネットワークを活かし、国産材・地域(地産)材の活用や不燃パネルの製造、不燃木材の加工、その他特殊塗装にも対応しております。
外装材に適した防腐処理材の加工・塗装を全て自社工場で行なっているため、高い品質の建材をお求めの方はぜひ弊社にお任せください。
屋外用木材に適した木材塗装として、以下の塗料に対応しております。
- 【着色造膜系塗料】レナー(フィルムフォームタイプ)
- 【着色浸透系塗料】キシラデコール・レナー(ハイドロオイルタイプ)・ノンロット・バトン・ガードラック
- 【クリア造膜系塗料】S-100・レナー(UVハイドロオイル)・ガードラック透明
- 【クリア浸透系塗料】バトン・オスモ(外装用クリアー)
この中でも特におすすめなのが、レナー(RENNER)社の水性木材塗料です。
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実験結果では、国内メーカーの塗料と比べても「変色・白亜化・ひびわれ・水脹れ・質量変化」が明らかに起こりにくいことが分かっており、紫外線や雨風だけではなく、汚染・塩害・低温・高温への耐性が証明されています。
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柏田木材では、国内でも早くからRENNER社の「透明造膜・着色造膜・着色浸透」タイプの塗料を取り扱っており、工場塗装による高品質でムラのない木材を提供しております。
木材の耐候性を高めて長期間強度と木目の美しさをキープしたい方は、ぜひ柏田木材へご相談ください。
まとめ
木材の耐久性と美観を維持するためには「防腐処理」が欠かせません。
ただし、使用する薬剤や処理方法によって耐用年数は異なるので注意しましょう。
長期間防腐効果を維持したい場合には、工場で加圧注入・保護塗装された木材がおすすめです。
柏田木材は1950年創業以来、時代と共に様々な木質建材の製造・販売を行ってまいりました。
屋外施工に適した木質建材を多数取り扱っておりますので、材料選定に迷っている方はぜひご相談ください。
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