【板張り壁がおしゃれ】メリット・デメリットや後悔しないためのポイントを徹底解説
最近、住宅だけではなく中規模以上の公共的な建物へも「板張り壁」の採用事例が増えています。
しかし、板張り壁の魅力や長所、欠点について知らない方も多いでしょう。
そこで、今回は「板張り壁」について、種類や特徴、メリット、デメリットや注意点とその対策について“木材のプロ”が詳しく解説します。
メンテナンス方法やリフォームでの上貼り、関連法規や補助金制度についてもお話ししますので、木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
● 板張り壁にはデザイン面・性能面・環境面においてメリットがあります。
● 板張り壁の材料にはいくつかの種類がありそれぞれ特徴が異なりますので、事前にデメリットも踏まえて材料を選定しましょう。
● 「柏田木材」は1950年に奈良県で創業して以来、国内外から上質な木材を仕入れて高品質な木質建材を製造販売しております。
コンテンツ
板張り壁とは|メリットと効果
「板張り」とは、壁や天井に板材(羽目板)そのものを仕上げ材として施工する手法を指し、壁に用いると「板張り壁」、天井に用いると「板張り天井」と呼ばれます。
羽目板とは、板材の長手方向に溝を作って表から固定釘などが見えないようにした成形された材料です。
室内壁だけではなく外壁へ板張りを採用する事例は少なくありません。
採用事例が増えている理由は、魅力的なメリットにあります。
- デザインにナチュラルな印象をプラスできる
- 室内に広範囲で採用すると、無垢材による調湿性や吸音効果を得られる
- 室内に採用すると、木の香りによるリラックス効果を得られる
- 天然素材である無垢材は、材料の廃盤や欠番がない
- 地球温暖化などの環境問題解決に貢献できる(3Rの実現※や、森林の活性化※につながる)
※3Rの実現:3RとはReduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の総称で、リデュースは製造過程における資源量や廃棄量を押さえる取り組みを指し、リユースは使用済製品(全部もしくは一部)を再利用する取り組み、リサイクルは、使用済廃棄品を資源に戻したり燃料など別のものとして活用する取り組みを指します。木材は原料の中でも数少ない3Rを実現しやすい材料として注目されています。(参考:環境省|3R徹底宣言!)
※森林の活性化:森林で育つ樹木は、定期的に伐採・利用・植林を繰り返すことで木々が若返り、多くのCO2を吸収するとされています。(参考:林野庁|木材を使うと森が育つ)そのため、木材の積極的利用は地球温暖化解決の糸口です。
脱炭素化やカーボンニュートラルな取り組みが重要視される近年において、商業施設・公共施設などの大規模施設で「建物のサステナブル化」は欠かせません。
木材利用は、サステナブル建築における重要なポイントであることから、環境面のメリットにより設計プランへ採用されるケースが増えています。
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板張り壁材の種類と特徴
板張り壁に使用される材料には、いくつかの種類があります。
それぞれ特徴が異なりますので、材料選定の際は注意してください。
無垢材(羽目板)
国産材では杉・桧(ひのき)・カラマツ、輸入材では米杉・レッドシダー・セランガンバツなどが用いられていますが、最近は価格変動が少なく高品質な国産材を利用するケースが大半です。
天然素材ならではのランダムな木目やナチュラルな質感が魅力で、調湿効果や香りによるリラックス効果を期待できます。
ただし、経年変化(変形・変色)が大きいため、事前に注意が必要です。
突板・挽板化粧板
突板は厚さ0.2〜0.3mm、挽板(ひきいた)は厚さ2〜3mm程度に天然木をスライスした素材で、合板などに接着して化粧板として利用します。
無垢材と同様に自然な木目が魅力ですが、無垢材部分が薄いため質感は少々硬めで調湿効果・香りによるリラックス効果はあまり期待できません。
また、突板や挽板の幅は限られるため、材料によっては一定間隔で表面材の継ぎ目が現れるので、事前に仕上がりのイメージを確認しましょう。
ただし、無垢材よりも変形リスクは少なく、希少性のある高価な樹種でもコストを抑えられます。
木目プリント化粧板(メラミン化粧板・オレフィン化粧板など)
印刷技術によって精巧に木目を再現した“天然木由来ではない”化粧板もあります。
これらは木の持つ調湿機能などはありませんが、表面の耐キズ性や耐水性に優れている点がメリットです。
ただし、木目は一定のパターンが続き、質感は無垢材や突板・挽板化粧板と比べると、硬く冷たく感じます。
一般的に、「板張り壁」と呼ばれるのは無垢材もしくは突板・挽板化粧板を用いた場合で、天然木を含まな木目プリント化粧板を用いた場合は板張り壁とは呼びません。
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板張り壁のデメリットやよくある後悔談と対策
板張り壁は、デザインや環境への観点においてメリットがありますが、一方で採用前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
では、対策方法と合わせて紹介します。
材料・施工の費用はクロスや塗装仕上げより高め
板張り壁は、ビニルクロスや塗装仕上げと比べると、一日の施工可能面積は小さく、材料費と施工費を合わせた総コストは割高です。
そのため、アクセントウォールとして採用するなど、予算に合わせて施工面積を調節しましょう。
【内壁】 仕上げ方法 | 単価目安 (材料費+施工費) |
---|---|
ビニルクロス仕上げ | 1,000~2,000円/㎡ |
塗装仕上げ | 1,000~3,000円/㎡ |
板張り | 7,000~15,000円/㎡ |
【外壁】 仕上げ方法 | 単価目安 (材料費+施工費) |
---|---|
モルタル塗装仕上げ | 7,000〜8,000円/㎡ |
金属サイディング | 7,000~15,000円/㎡ |
窯業系サイディング | 6,000円〜15,000円/㎡ |
タイル張り | 15,000円/㎡〜 |
コンクリート打ち放し | 8,000〜10,000円/㎡ |
板張り | 7,000~15,000円/㎡ |
ただし、上記単価目安を見ても分かる通り、外壁仕上げの方法としては他の工法と比べて費用を抑えられる可能性があります。
施工環境や材料の保管環境によって変形するリスクがある
壁の仕上げ材として用いる羽目板材は、どちらも長尺材であるゆえに、施工環境や保管環境の湿度変化によって、反り・ねじれ・伸縮・木割れなどの変形が起こる可能性は十分考えられます。
そのため、できるだけじっくり低温で長期間かけて乾燥させた(含水率を下げた)良質な材料を選びましょう。
高温短期間乾燥された材料は、少しの湿度変化で変形してしまいます。
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内装制限の対象部位は材料選びに注意が必要
内装制限とは、不特定多数が利用する公共的な建物において、火災時の避難経路や避難時間を確保するために室内の天井と壁に耐火性の高い材料を使わなくてはいけない規定です。
内装制限の対象範囲に板張り壁を採用する場合は、不燃木材を使用するか不燃材と板張りの二重構造にしなくてはいけません。
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耐火・準耐火・防火構造の外壁板張りは不燃仕様に
建物を建てる地域が防火地域・準防火地域・法22条地域(建築基準法22条指定区域)に該当する場合や、延べ床面積や階数が一定規模以上である場合、建物を「耐火構造・準耐火構造・防火構造」のいずれかにしなくてはいけません。
それぞれ「屋内から火災が発生した時や周囲で火災が発生した時に、火災が終了するまで延焼をせず建物が倒壊するような変形や損傷などが起きない時間」が決められています。
構造の種類 | 壁に関する耐火性能 |
---|---|
耐火構造 | 間仕切壁(内壁):耐力壁・非耐力壁ともに「1時間」 外壁:耐力壁「1〜2時間(階数による)」、非耐力壁(延焼の恐れがある部分※)「1時間」、非耐力壁(延焼の恐れがある部分以外)「30分」 |
準耐火構造 | 間仕切壁(内壁)・外壁:非耐力壁(延焼の恐れがある部分)・耐力壁ともに「45分〜1時間(階数による)」、非耐力壁(延焼の恐れがある部分以外)「30分」 |
防火構造 | 外壁:非耐力壁(延焼の恐れがある部分)「30分」 |
※延焼の恐れがある部分:隣地境界線・道路中心線・建築物相互の外壁間の中心線を基準として、階数に応じて一定距離の範囲内に入る部分
内装制限と同様に、該当する範囲に板張り壁を採用する場合は、不燃木材の利用や不燃材と板張りの二重構造にするなどの工夫が必要です。
最近は防火被覆の厚さを確保した上で木材を利用する「燃えしろ設計」という手法が採用されるケースもあります。(参考:林野庁|中規模ビルの木造化のすすめ|中規模ビル3階建て事務所の木造化標準モデル設計の手引き)
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板張り外壁のメリット・デメリットとは?法22条地域・経年劣化・メンテナンス方法など
経年による変色が現れる
木材は、紫外線による影響で濃色化・淡色化し、色が薄い樹種は雨染みで黒ずむ可能性があります。
そのため、直射日光や雨にさらされる場所へ採用する場合は、どのように色味が変化するか事前チェックが欠かせません。
経年変色を抑えたい場合は、軒下など紫外線や雨の当たらない場所へ採用するか、着色された材料がおすすめです。
最近は日焼けによる変色を防げる塗料もあるため、白木の風合いを活かしたい方はメーカーへお問い合わせください。
外壁は腐食・蟻害・カビの発生リスクがある
雨や湿気にさらされる外壁は、木材腐朽金繁殖による「腐食」やシロアリ繁殖による「蟻害(ぎがい)」、カビ菌繁殖のリスクがあります。
腐食や蟻害が進めば耐久性が落ち、カビが発生すれば美観を損ねかねません。
そのため、外壁へ板張りを採用する場合は以下の条件が揃わない通気性が良い場所を選びましょう。
被害の種類 | 発生条件 |
---|---|
腐食 | 木材腐朽菌は、周囲の気温が30℃程度で空気中の湿度が上昇することで木材の含水率※が20%以上になると繁殖する (気温3℃以下・木材の含水率が20%以下では発生しにくい) |
蟻害 | シロアリは食べやすい柔らかい樹種を好み、木材腐朽菌と同じ環境下で繁殖する (気温3℃以下・木材の含水率が20%以下の環境下もしくはハードウッドには発生しにくい) |
カビ | カビ菌は、周囲の気温が15〜30℃程度で湿度が70%以上になると繁殖する (気温15℃以下・湿度60%以下では発生しにくい) |
※含水率:建築資材として使用される木材の含水率は15%程度が一般的
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手垢などの汚れがつきやすい
内壁など人の手によく触れる場所には手垢などの汚れがつきやすく、場合によっては電気焼け※の跡が残ってしまう可能性があります。
※電気焼け:電化製品から発せられる熱により、壁面が部分的に黒ずむ現象
スイッチ周りやキッチン・給湯室などは特に対策が必要です。
これらの汚れや部分的な変色は、クリア塗装もしくは濃い色に着色された材料を採用すると目立ちません。
塗膜の分厚いUV塗装品は、耐汚性だけではなく耐摩耗性も高まり細かいキズがつきにくくなるため、最近採用事例が増えています。
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温風・冷風が長時間当たる場所は変形しやすい
空調機器本体もしくは室外機、瞬間湯沸かし器の吹き出し付近を板張り壁にすると、局所的に温風や冷風が当たり、通常よりも反り・ねじれ・伸縮・木割れなどの変形リスクが高まります。
事前に温度変化による変質・変色リスクを確認しましょう。
外壁の場合は、吹き出し口から距離を離すと問題が解消される可能性もあります。
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【FAQ】板張り壁に関するよくある質問
「柏田木材工業株式会社」は1950年に奈良県五條市にて創業して以来、国産材を使った高品質な木質建材を作り続けてきました。
そこで、これまで多くの方からいただいた板張り壁に関するご質問を紹介します。
Q.「板張り壁のメンテナンス方法や周期は?」
無垢材を使う場合、腐食や蟻害などの特殊な状況を除けば、基本的にメンテナンスフリーです。
ただし、これはあくまでも耐久性など性能面だけの観点であり、汚れやシミは避けられません。
そのため、汚れ・シミを避けて長期間きれいに保ちたい場合は、こまめな再塗装が不要な「UV塗装品」がおすすめです。
ただし、UV塗装は原則「屋内用」で、屋外にUV塗装品を施工すると太陽の紫外線によって塗膜が剥がれるリスクが高いため注意してください。
UV塗装は大掛かりな設備が必要なので、自社で塗装加工しているメーカーは限られます。
柏田木材は、自社工場にてUV塗装からオーダー色対応の着色塗装まで全て自社工場にて行なっていますので、お気軽にご相談ください。
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Q.「リフォームで既存壁に上貼りできる?」
既存モルタル外壁や室内の壁にリフォームで羽目板を上貼りすることはできます。
ただし、内壁(間仕切り壁)の下地がプラスターボード(石膏ボード)の場合は耐荷重の観点からそのままでは板材を設置できません。
プラスターボードを一度撤去して間柱を追加するか、プラスターボードの上に捨て張り※するか構造用合板に入れ替える工事が必要です。
※捨て張り(すてばり):仕上げ材の下に下地材を2重に張る工法
また、既存壁へ上貼りすると壁が分厚くなるため窓周りなどの取り合いに段差ができて細かい造作工事が発生する可能性もあります。
場合によっては既存壁下地を撤去した上で板張りに変えた方がコストを抑えられるケースもありますので、施工会社へご相談ください。
Q.「板張り天井もトレンドって本当?」
板張り壁と同様にインテリアのトレンドとなっているのが「板張り天井」です。
部分的に取り入れるパターンと全面に取り入れるパターンがあり、住宅だけではなく、ホテルや店舗、学校、病院にも採用されています。
壁と天井で同じ材料を使いトータルコーディネイトしている事例は少なくありません。
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Q.「板張り壁で利用できる補助金は?」
壁材に限らず構造部材や床材などに規定以上の地産材を使うと、補助金の対象となる可能性があります。
地産材とは、産地を都道府県単位で限定した木材で地域材とも呼ばれ、様々な自治体が利用促進へ取り組んでいます。
吉野杉や吉野桧の産地として知られる奈良県では、建設地を県内だけに限定せず全国各地の物件に対して奈良の木を使用した住宅助成事業を実施しており、最高で30万円/戸が支給されます。
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高品質で産地にこだわった羽目板は「柏田木材」にお任せください
板張り壁のメリットを最大限に活かせるのは、やはり無垢材から作られた羽目板です。
日本はその国土の2/3が森林で、杉や桧は北海道から九州まで全国各地で育てられています。
その中でも高品質な木材を産出しているのが奈良県です。
柏田木材は吉野杉や吉野桧の産地として知られている奈良県で1950年に創業して以来、良質な原木を仕入れて様々な建築木材へ加工販売する木質建材メーカーです。
これまで培った知識とネットワークを活かし、国産材・地域(地産)材の利用や不燃木材の加工、その他特殊塗装にも対応できる製品を取り扱っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。
そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで一貫したサポートを提供できる点が弊社の強みです。
「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。
まとめ
板張り壁にはデザイン面・性能面・環境面においてメリットがあります。
ただし、設計プランへ取り入れる際は材料の特性や法令、経年変化について事前に知っておいていただきたいデメリットや欠点があるため、材料選びは慎重にしましょう。
“柏田木材”は、良質な原木を仕入れて多種多様な商品を製造しているからこそ、木材のプロとしてお客様のご予算・設計デザインに合う木質建材を提案いたします。
「どのような経年変化が現れるか心配」
「既製品の材料では設計デザインにフィットしない」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
「ウッドインテリアを採用したいが耐久性が心配」
そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。