【奈良県産木材】有名な種類と今後の課題について“木材のプロ”が解説

世界的にも有名な吉野杉・吉野桧の産地として知られている奈良県は、高品質な木材を産出する地域です。
しかし、奈良県産の木材や木質建材にどのような特徴があるのかはそれほど知られていません。
そこで、今回は奈良県産の木材・木質建材について、その特徴と種類、価格の傾向を徹底解説します。
奈良県の取り組みや現在抱えている問題点、奈良県産木材を使った建築材料も紹介しますので、木の魅力を生かした設計デザインを検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
● 奈良県は、全国でも有数の銘木産地として有名です。
● 奈良県には林業を営む人工林が多く、主にスギ・ヒノキが生育しています。
● 私たち「柏田木材」は、1950年に奈良県で創業して以来、国内外から上質な木材を仕入れ高品質な木質建材を製造販売しております。
コンテンツ
奈良県産材の特徴と強み

日本は、その国土の60%以上を森林が占める世界でも有数の森林大国です。
その中でも、奈良県は県の面積の77%(約28万ヘクタール)を森林が占め、その面積は東京都の1.3倍ほどに匹敵します。(参考:奈良県|森林の働き)
奈良県内の森林のうち、およそ16.5万ヘクタールが林業を目的とした人工林で、主にスギ・ヒノキ・マツなどの針葉樹が植林されています。
その中でも、吉野川上流地域(川上村、東吉野村、黒滝村)は「吉野林業地域」として知られており、その歴史は1,500年代までさかのぼります。
大阪城や伏見城の建築材料として吉野材が使われているという記録もあるほどです。
現在は、県内の十津川村や上北山村、川上村、五條市が人工林面積の広いエリアです。(参考:奈良県|令和4年度奈良県林業統計)
奈良県で育った木材の特徴は、主に4点あります。
- 強度が高くたわみにくい
・・・たわみにくさを表すヤング係数が、他の産地材よりも高い - 節が少なくて木目がきめ細かく美しい
・・・他の産地よりも密度高く植林し、こまめに枝打ち(細かい枝を落とす)するため、節ができづらく木目が細かい - 吉野杉や吉野桧は特徴的で美しい色味を持つ
・・・心材は上品で高級感のあるピンク味を帯びており、他の産地材では見られない - シロアリ被害を受けにくく耐久性が高い
・・・他の産地材よりも年輪幅が狭く木材の密度が高いため、耐虫性が高い
これらの理由から奈良県産の木材は高品質であることで知られており、主に建築資材として国内だけではなく世界中で活用されています。
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奈良県産木材の種類|吉野杉・吉野桧以外の樹種も

奈良県内の民有林で育つ樹木の種類と割合は以下のとおりです。
【樹種】 | 【割合】 |
---|---|
人工林 針葉樹(スギ・ヒノキ) | 森林面積:61.3% 森林蓄積:78.3% |
天然林 広葉樹(コナラ・クヌギなど) | 森林面積:32.4% 森林蓄積:18.0% |
天然林 針葉樹(アカマツ・モミ・ツガなど) | 森林面積:4.2% 森林蓄積:3.4% |
人工林 広葉樹(コナラ・クヌギなど) | 森林面積:0.7% 森林蓄積:0.2% |
森林蓄積とは、現在もしくは将来、木材などへ加工できる森林資源量の目安です。
奈良県内の人工林では、齢級10〜14(樹齢40〜60年)※の森林蓄積量が最も多く3,600万㎥程度、製材に適している樹齢30年を超える森林蓄積量は694万㎥とされています。(参考:林野庁|樹種別齢級別蓄積(令和4年3月31日現在))
※齢級:樹齢を5年単位でまとめた単位で、1齢級は植林してから5年以内であることを示す
奈良県内における森林蓄積量の大半は、人工林で育つスギ・ヒノキであり、コナラやクヌギなどの広葉樹はほとんど市場へ出回っていません。
県内のスギ・ヒノキの産地は吉野林業地域(吉野杉・吉野桧)が有名ですが、それ以外にも桜井市・多武峰地区を含む中部地域も産地として知られています。
ただし、吉野林業地域以外は、木材価格の下落や人材不足などにより、森林整備が不十分で生産量が減っている現状もあります。(参考:奈良県|森林・林業)
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奈良県産木材は高い?安い?

吉野杉などブランド化された銘木が多い奈良県産の木材に対して、「価格が高い」という印象を持つ方も多いでしょう。
確かに過去には高級材として市場にて高値で取引されていましたが、輸入材(外材)の台頭や和室を作る住宅が減ったことなどにより、一般的な他の産地の木材よりも価格が大きく下落しているのが現状です。

上のグラフを見ても分かるとおり、奈良県産原木価格はピーク時の昭和55年から「マイナス約78%」も下落しています。
昭和55年前後は、全国平均の木材価格に対して奈良県産木材の価格は「1.5倍程度」でしたが、現在は「1.2倍程度」程度で安定しています。
奈良県産木材は平均的な木材価格より2割程度高いものの、高品質で意匠性も高いことから“コストパフォーマンスの良い木材”として認識されています。
奈良県産木材の抱える問題点と課題

高品質な木材を産出する奈良県の林業ですが、現在様々な問題を抱えています。
奈良県産木材の需要量は最も多かった123万㎥(昭和50年頃)から、16万㎥(令和3年)と1/7程度まで低迷し、林業所得が大きく減少しているのです。(参考:奈良県|令和4年度奈良県林業統計)
特に奈良県産木材の需要減少は激しく、昭和55年時点で産出量が全国2位であったにもかかわらず、平成24年には29位まで低迷しています。(参考:奈良県|林業及び木材産業関連データ)
この結果は、決して木材の品質が落ちたからではありません。
主な原因として考えられているのは、以下の点です。
- 収入減少による施業放置林の増加
- 慢性的な人材不足と高齢化・若者不足
- 再造林コスト(※)の高騰
- 間伐(※)や下刈(※)作業が利益を生み出さない現実
※再造林コスト:伐採後に地拵え(じごしらえ)や苗木購入、下刈りなど再植林までに必要なコストで、育林総経費のうち約70%を占める(参考:林野庁|再造林の推進)
※間伐(かんばつ):植林した樹木同士が競り合って互いの生育を妨げないように、枝や根の混み具合に応じて一部の樹木を伐採する作業
※下刈(したがり):植林した苗木の生育を妨げる雑草や木の下に生える低木を刈る作業
これらの問題は奈良県に限らず、全国各地で起こっています。
林野庁主導で、日本の森林資源と林業を守るために以下の取り組みが始まりつつあります。
●国産材・地産材(地域材)の利用促進
●間伐材の活用
●林業を担う人材の育成
●ICT(情報通信技術)導入による森林管理の効率化
●林地残材有効利用支援
奈良県産木材の活用方法と県の取り組み

奈良県産の木材は、これまで建築資材や工芸品の材料として使われてきましたが、近年はその活用方法の幅が広がっています。
- 製材
- 木質建材の材料
- 木質製品の原料
- 家具の材料
- バイオマス燃料(主に間伐材や小径材)
- 製紙用チップ(主に間伐材や小径材)
このように、住宅や公共施設、商業施設、宿泊施設などの建築物や、生活に欠かせないエネルギー、日常生活で使う箸や器などの木質製品など、マクロからミクロまで多岐に渡る分野において奈良県産材の利用機会が増えているのです。
また、県内の各市町村における公共建築物へも奈良県産材を用いた事例が増えています。(参考:奈良県|奈良県における木材を利用した公共建築物の事例紹介)
奈良県産木材の選定・販売は「柏田木材」へお任せを

私たち“柏田木材”は、国産の良質な木材を様々な建築材料へ加工販売するメーカーです。
以下の製品について、奈良県産材を使用しております。
無垢フローリング
【樹種】
奈良県産スギ・ヒノキ
【サイズ】
1960/3960 × 120 × 15(エンドマッチなし)
1950/3950 × 120 × 15(エンドマッチあり)
羽目板
【樹種】
奈良県産スギ・ヒノキ(無垢材)
【サイズ】
1960/3960 × 120 × 12
上記以外にも、奈良県産材を用いたルーバーやカウンター材、不燃木材のご注文も承っております。
柏田木材が長年ご愛顧いただいている理由は、ずばり多彩で高品質な当社の技術力にあります。
- レパートリー豊富な塗装・表面加工ラインナップ
- 木材の切削・接着・着色・塗装を全て自社工場で行うことによる高い品質安定性の確保
- 木材産地に近い立地によるリーズナブルな価格の実現
- 良質な国産材(県産材・地域材)の活用
- “こだわり”を実現できる多彩な特注加工・OEM製造
- 自動倉庫管理のオンタイム納品による施工効率性アップ
柏田木材は、自社製品を販売するだけに留まらず、お客様のご要望や課題を伺いながら仕様を共に決めていく“開発支援”や、“特注製造”も行っています。
そのため、材料選定やデザイン構想段階から製造まで、一貫したサポートを提供できる点が弊社の強みです。
「こんな材料があればいいのに」というお悩みを解決するお手伝いをいたします。
まとめ
高品質で知られている奈良県産の木材はスギとヒノキが大半です。
価格は他の産地よりも少々割高ですが、その差は以前ほどではありません。
そのため、コストパフォーマンスの高い木材としておすすめです。
ただし、近年は木材全体の需要が減っていることから、人材不足や放置林の増加が深刻です。
この問題を解決するために、奈良県では県産材の利用促進を目的に補助金や間伐材利用などの取り組みを行なっています。
“柏田木材”は、奈良県産材をはじめとした各地の高品質な木材を加工・製造しているからこそ、木材のプロとしてお客様のご予算・設計デザインに合う木質建材を提案いたします。
「木質建材を使いたいが経年変化が心配」
「既製品の材料では設計デザインにフィットしない」
「国産材を使いたいがコスト面などでハードルが高い」
「希少樹種を使いたいが必要量の材料が確保できない」
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そんなお悩みを抱えている企業様を、私たちがしっかりサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。